コロナ禍での社長交代 虎屋にみる長寿企業のカギ (2/2) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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コロナ禍での社長交代 虎屋にみる長寿企業のカギ

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会長の黒川光博氏

会長の黒川光博氏

15条から成る「掟書」

15条から成る「掟書」

リニューアル後の赤坂店

リニューアル後の赤坂店

「ゆるるか」

「ゆるるか」

 今振り返ると、こういった“兆候”のようなものはコロナの感染拡大よりもずっと前、東日本大震災の辺りからあったのではないかと思うのです。あの出来事によって、やはり自然には敵わないと痛感しましたし、私たちは今やるべきことをちゃんとやれているだろうか、と改めて考えさせられました。

いつの時代も、働く人の心の満足度に注力する

「前年比」という言葉がありますが、今年これだけ売り上げが下がってしまうと、来年、本年と比べれば良くなる可能性が高い。そのようなときに、前年比という価値基準だけで物事を見てしまって良いのでしょうか。私はよく「売り上げが第一ではない」と話しているのですが、やはりお客さまや働く人の満足があった上での、売り上げでしょう。今回の出来事は「新しい虎屋」を作るぐらいのつもりで、お客さまに喜んでいただけるような商品や売り方、働く人が満足できる働き方を見直す良い機会だと捉えたい。

 虎屋では数年前から、高齢者のための商品開発をしており、その一つとして、2017年から「ゆるるか」という、噛んだり飲み込んだりする力が弱くなった方でも召しあがりやすい、柔らかめの羊羹を出しています。購入されたお客さまから、病に伏して満足に食事ができなかった母が喜んで食べたと仰っていただいたことで、自分が携わっている仕事の尊さや意義を改めて感じたと、販売員から聞きました。商品も店舗も大切ですが、働く人の心の満足度に注力するのは、いつの時代も一番大切なこと。企業は人によって成り立っていますし、一緒に働いてくれる人にどれだけ恵まれるかはすごく大きいので、それを常に大事にしないといい結果にはつながらないでしょう。

若き当主がいつも困難を乗り越えてきた

 虎屋の歴史を振り返えると、困難に直面し乗り越えてきた時の当主は皆、20代後半や30代の若い世代ということ。当時の平均寿命というのもあるでしょうけれど、非常に若い人が決断を下して、それまでやってこなかったような新しいやり方をしてきた結果、虎屋は成長してきたのです。

 今年の6月末、長男が社長に就任したのですが、このような状況だからもっと先延ばししてもいいのではないかと何人かの方に言われました。けれども歴史に学べば、こういう時だからこそ若い力が必要なのではないか、という思いもあって交代を決断しました。

 彼は今35歳なのですが、私のような年代とはやはり考え方や価値観などがいろいろ違うなと感じます。但し、菓子というものが虎屋にとっては最も大事であり、お客さまがいてくださることで商売が成り立っていること、働いてくれている人が自分事として捉えて働くことが大切なのだという点では、意見が一致しました。

 若くて未熟だからできない、という言い方はよくされますが、歳をとってからではできないこともあるはずです。若いうちのほうが、画期的なことを考えられるかもしれない。そのような期待もしています。

(構成:カスタム出版部)


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