4月7日、政府から東京都を含む七つの都府県に「緊急事態宣言」が発令された。それ以前から多くの学校や教育機関は休校していたが、その状態をさらに延ばさざるを得なくなった。この事態に対し、「子どもの学びを止めてはいけない」と、ICTを積極的に活用して生徒とコミュニケーションをはかっているのが、東京都品川区にある私立中高一貫校・香蘭女学校だ。『早慶MARCHに入れる中学・高校』などの著者で、中学受験専門塾・スタジオキャンパス代表の矢野耕平氏が、同校を訪ねた。

東京都品川区の香蘭女学校(同校提供)
東京都品川区の香蘭女学校(同校提供)

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 香蘭女学校は1888(明治21)年に創設された伝統あるミッション校だ。現在までに1万人を超える卒業生を輩出している。同じ会派に属する立教大学の関係校推薦があり、卒業生約160人に対し50%(80人)の推薦枠が設けられている。さらに、2021年度大学入学生からはその枠が60%(97人)に増員される。

 本来なら新入生を迎え、活気溢れる学び舎は子どもたちの笑い声が響いている、そんな時期だ。しかしいま、子どもたちは誰一人いない。そう、新型コロナウイルス感染拡大により、休校しているのだ。

 学校の核となる「授業」がおこなえない……。

 この未曽有の事態に対して、私立中高の多くはすぐに動き始めた。

 そのような中、わたしはICTを活用して授業を展開しているという香蘭女学校の噂を耳にし、その様子を取材させてもらうことになった。

 香蘭女学校は今回の事態に対してどのような策を考えたのだろうか。教頭の船越日出映先生は大きく四つの方針に基づいてICT利用を考えたという。

「一つ目は、生徒・保護者・教員の安全面・健康面への配慮。二つ目は、可能な限り学校機能を止めないこと。三つ目は、生徒たちの生活の中心に授業を据えること。そして四つ目は、行事などについては一度決定したことでも柔軟に変更、対応していくこと。これらを実現するためにはICTの活用が不可欠だろうと判断したのです」

 香蘭女学校は独自に設定したタブレット端末のiPadを中学入学後に生徒全員に購入してもらい、ICTを用いた教育に力を入れていた。そんな背景があるからこそ下せた決断なのだろう。

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矢野耕平
矢野耕平

矢野耕平(やの・こうへい)/中学受験専門塾スタジオキャンパス代表・国語専科 博耕房代表。1973年生まれ。著書に『令和の中学受験 保護者のための参考書』(講談社+α新書)、『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』『男子御三家 麻布・開成・武蔵の真実』(ともに文春新書)、『LINEで子どもがバカになる「日本語」大崩壊』(講談社+α新書)、『旧名門校 VS 新名門校』(SB新書/SBクリエイティブ)、『早慶MARCHに入る中学高校』(朝日新書)など多数。

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