この4月からの新年度の香蘭女学校のICT活用の一端を紹介しよう。
同校が採用しているのは、「CYBER CAMPUS」という教育機関向けの情報共有・学習支援に特化したクラウド型の教育ICTソリューション(生徒と教員をつなぐシステム)のほか、クラスをiPad上で一元管理できる「iTunes U」を活用した授業配信、複数人でビデオ会議ができる「Zoom」を使った遠隔ホームルームやオンライン個人面談などだ。
ホームルームはZoom上で、教員と生徒たちが双方向でやりとりをおこなう。わたしが見せてもらったのは、クラス替えに伴う生徒たちの「自己紹介」。教員も生徒たちも笑顔で臨んでいたのが印象に残った。授業はiTunes Uを利用し、毎日3~4教科を配信するという。国、数、英、理、社にとどまらず、聖書、音楽、美術、技術・家庭、保健体育、情報なども含まれる。授業によってはタブレット用授業支援アプリである「ロイロノート」やCYBER CAMPUS、その他のアプリ等をiTunes Uと組み合わせて使用する予定だとか。
加えて、Zoomでのオンライン個人面談もおこなう。また、今後はオンラインでの学年集会、スクールカウンセラーや養護教諭との面談、英語科ネイティブ教員による英会話のレッスンや中等科生向けの洋書の読み聞かせなどを計画しているという。
船越先生はほほ笑む。
「こんな状況下ではありますが、先生たちはZoom越しでも、久しぶりに生徒たちと会話するのはやっぱり楽しそうですよ」
船越先生は、休校期間を子どもが自らの学びの姿勢を変える好機と考えてほしいと願う。
「授業コンテンツを配信しているいま、生徒たちには自身をコントロールして、学習を計画・実行する姿勢が必要になります。これを機にそういう習慣づけをおこなってほしいです」
ICTセンター長の甲斐雅也先生もうなずく。
「子どもたちは自粛にもう飽きていると思うのです。学校がコンテンツを提供すれば、みんなきっと食いついてくれるはずです。そしてわたしが期待しているのは、高校生たちと中学生の後輩たちのつながりが構築されることです。それが実現できたら素敵ですよね」
香蘭女学校のwebサイトを見ると、同校は「一人一人を大切にする教育」を掲げている。
このICTを活用した子どもの学びをバックアップする根本には、生徒たち「一人一人」に対する温かな思いが強く感じられたのだ。
■プロフィール
矢野耕平/中学受験専門塾スタジオキャンパス代表・国語専科 博耕房代表。1973年生まれ。著書に『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』『男子御三家 麻布・開成・武蔵の真実』(ともに文春新書)、『LINEで子どもがバカになる 「日本語」大崩壊』(講談社+α新書)、『旧名門校 VS. 新名門校』(SB新書/SBクリエイティブ)、『早慶MARCHに入れる中学・高校』(朝日新書、共著)など。