支持挽回の時間もなく、そのまま7月の参院選に突入。その結果、民主党の60議席に対して自民党は過去最低の37議席しか獲得できず、参院で与野党が逆転した。安倍首相は惨敗後も続投を表明したものの、8月に辞任に追い込まれた。

 現在の安倍内閣の支持率は、すでに第一次安倍政権末期の水準にまで落ち込んでいる。自民議員の危機感は日々、強くなっている。

 第二次安倍政権以降で推進されている経済政策は、「アベノミクス」の名で官邸主導で進められている。そこで事実上の政策の決定機関となっているのは、「規制改革推進会議」や「未来投資会議」など、安倍首相の諮問機関だ。

 選挙に選ばれたわけでもない民間議員が政策決定に大きな影響力を持つことに、自民党内の反発は強い。

「彼らは、経済政策を決定できる権限があるのに、株式投資の制限もなく、資産公開も求められない。あからさまに自分の所属する会社に利益誘導している民間議員もいるのに、政策は官邸から頭ごなしに降ろしてくる」(自民議員)

 アベノミクスでは地方政策が置き去りにされた。16年には、財界寄りの農業政策を推進してきた奥原正明氏を農水省の事務次官に異例の抜擢。現在は国有林の民間委託や漁業権の開放などの政策を進めようとしている。農水官僚も嘆く。

「農水省では農業の効率化と地方政策の両方を進めてきた。それが奥原次官になってから地方政策はできなくなってしまった」

 支持率急落を受けて、自民党内では官邸主導のアベノミクスに対する不満が爆発寸前だ。前出の自民議員は言う。

「今の政策に対する党員の不満はかなり強い。今後は、現場無視の規制改革推進会議に対抗軸を作る。これは党員の声なんだ」

 今年秋に予定される総裁選では、党員にも投票権がある。ポスト安倍政権に向けて、自民党内の政局が動き始めた。

「自民党が3月、党員らに対して行ったサンプル調査で、安倍首相支持は10%以下という厳しい結果が出て幹部らに衝撃が走ったそうです。総裁選に出たら、石破(茂)さんはかなり地方票をとるだろう」(自民党関係者)

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政界の人間が恐れる「亥年の選挙」