なぜ値引きが行われたのか。野党は関係者を国会に呼んで説明するよう求めたが、与党は拒んだ。いくつもの疑問が積み残され、行政が公平・公正に行われたのかという問題の核心に迫ることはできなかった。

 与党は「安倍一強」ともいわれる内閣の下請け機関になっている─。いまの与党には、そんな評価もつきまとう。

 昨年3月の参議院(参院)予算委員会では、自民党議員が、安倍首相が答弁に立つたびに、必ずスーツのボタンをかけていることを礼儀正しいとほめ、ネット上などで「ヨイショ質問の最たる例」として話題になった。一昨年の衆院内閣委員会では、別の自民党議員が余った質問時間で般若心経を唱え、批判を浴びた。

 行政権を担う内閣を監視し、緊張感のある政治をつくるのは、国会の使命だ。もうすぐ始まる通常国会でも与党が野党の質問時間を削ろうとすれば、国会が骨抜きになりかねない。

 森友・加計学園の問題以外にも、北朝鮮情勢や少子高齢化対策など、国会で論じ合うべきテーマは数多い。どうすれば充実した国会審議を実現できるのか。国民の代表である国会議員の自覚と責任が問われている。(解説/朝日新聞論説委員・内田晃)

【キーワード:三権分立】
立法(国会)、行政(政府・内閣)、司法(裁判所)が互いにチェックし、バランスをとる。日本の憲法はこの原則に立っている。権力の乱用を防ぎ、主権者である国民の権利や自由を守ることが目的。国会は立法府として、法案審査などを通じて内閣が担う行政権を監視する。衆院は、解散か総辞職を迫る内閣不信任決議をすることもできる。

※月刊ジュニアエラ 2018年2月号より

ジュニアエラ 2018年 02 月号 [雑誌]

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内田晃
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