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ノーベル文学賞のカズオ・イシグロさん 日本で触れた最も記憶に残る本とは?

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ノーベル文学賞を受賞した日系イギリス人作家のカズオ・イシグロさん (C)朝日新聞社

ノーベル文学賞を受賞した日系イギリス人作家のカズオ・イシグロさん (C)朝日新聞社

 5日にノーベル文学賞を受賞した日系イギリス人作家のカズオ・イシグロさん。「AERA English」2011年6月号に、幼い頃の思い出や文学体験、自らの小説の登場人物について語っていた。当時のインタビューを再録する。

*  *  *
――あなたは5歳でイギリスに移住されました。その頃読んで、英語やイギリス流生活を学んだ本を教えてください。

 男の子だったから読書はあまりしなかったけれど、唯一夢中で読んだのはシャーロック・ホームズだね。4、5歳の頃、日本で母が読んでくれていたことも関係していて、まだ覚えているのもあるよ、「まだらの紐」とかね。

 9、10歳の頃はいっぱしのホームズ・マニアだった。ホームズはヴィクトリア時代の英国紳士の典型で、僕の子ども時代にはもう誰もあんな話し方はしていなかった。それでもイギリスのある種の人たちのベースを教わったように思うね、「親愛なるワトソン君」と話すようなタイプの人たちのね(笑)。

 アメリカのカウボーイ映画やTVドラマもよく見ていた。よく(アメリカ式発音で)「よう!」なんて言ってしまったりね(笑)。当時のイギリスはまだ旧式で、みんな教会に通っていたし、まともな中流階級の人たちの間では話し方やマナー、子どものしつけまでいろんな決まりが残っていた。だから僕が「はい」と答えるかわりに「うっす」なんて言うと、みんなギョッとしていたね(笑)。

――P.G.ウッドハウス(20世紀前半から半ばにミドルクラスの子弟を中心に絶大な人気を誇ったユーモア作家)のような、古き良き英国の若者向けの小説は読みましたか?

 もう少し大きくなってからね。当時ああいう世界観はもう失われつつあったけど、僕が育った町ギルフォードはP.G.ウッドハウスの生誕地でもあって。イギリスの中でも裕福で旧式かつ保守的な人たちの逃げ場みたいな町でね。確か犯罪率がイギリスで一番低いとかで。戦前のイギリスの雰囲気が残っている。


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