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他人のiPS細胞を移植?! “iPS細胞ストック”の可能性

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他人のiPS細胞からつくった目の細胞を確認する大日本住友製薬の研究員 (c)朝日新聞社

他人のiPS細胞からつくった目の細胞を確認する大日本住友製薬の研究員 (c)朝日新聞社

 京都大学の山中伸弥教授が発見し、ノーベル賞を受賞したことで話題となったiPS細胞。そんなiPS細胞を利用した治療を、誰もが受けられるようになるかもしれないという。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された解説を紹介しよう。

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 健康な人の細胞からつくったiPS細胞をたくさんの患者の治療に使ってみる研究が来年にも始まる。うまくいけばiPS細胞を使った医療が誰でも受けられるようになるかもしれない。

 iPS細胞は、京都大学(京大)の山中伸弥教授らが発見した。体の様々な細胞に変化させられる。2年前には世界で初めて、理化学研究所(理研)などがiPS細胞からつくった目の細胞を目の難病の患者に移植した。

 そのときは、患者本人の皮膚の細胞からiPS細胞をつくった。その患者だけが使える専用の細胞を準備し、慎重に安全かを調べたので、手術の準備に10カ月間、約1億円がかかった。

 本人だけでなく、いろんな人に使えるiPS細胞を前もって準備できれば、もっと早く手術が可能だし、一人あたりの費用も安くできる。そこで、今回はあらかじめ健康な人から提供してもらった血の中の細胞からiPS細胞をつくっておくiPS細胞ストックを使う計画だ。理研の高橋政代プロジェクトリーダーは「前回の費用で5人分はカバーできると思う」と話している。

 課題もある。移植により他人の細胞が自分の体の中に入ると、体を守る免疫細胞が他人の細胞をやっつける「拒絶反応」が起こる。iPS細胞ストックを使うときもその可能性がある。

 そこで、研究チームは免疫細胞が攻撃の目印とするたんぱく質の「型」に注目。日本人の多くに共通する型の人から血を提供してもらってiPS細胞をつくり、型に合う人を手術の対象にすれば、拒絶反応が起こりにくくなるとみている。

 最初に試すのは5人。早ければ来年にも手術する。近い将来には普通の病院でiPS細胞を使った治療が受けられるようになることを目指している。

 iPS細胞の発見から10年。ほかにも、手足が震えてしまうパーキンソン病や、体の一部が動かなくなる脊髄損傷、重い心臓病などの治療にiPS細胞を使おうという試みも進んでいる。山中教授は「iPS細胞は再生医療を加速できるのではないかと思って、一生懸命つくりました。たった一人ですが臨床応用も始まり、すごいことだと考えています」と話している。(解説・合田禄/朝日新聞科学医療部)


【キーワード:iPS細胞ストック】
京都大学iPS細胞研究所が医療に使うために蓄えているiPS細胞。献血した健康な人に少しの血を提供してもらってつくっている。体の中で悪さをするような遺伝子の変化がないかなど、厳しい確認をして、すでに一部を研究所や製薬会社に提供されている。患者の免疫の型に合わせて選べるよう、たくさんの型を集めようとしている。

※月刊ジュニアエラ 2016年9月号より


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