災害時の避難はまさに「想定外」の連続。4月に起きた熊本地震では、どのようなことが起きていたのだろう? 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、ジャーナリストの堀潤さんの現地リポートを紹介する。
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4月17日夜、指定避難所である西山中学校(熊本市)では、多くの人がグラウンドで車中泊をしていた (c)朝日新聞社
4月17日夜、指定避難所である西山中学校(熊本市)では、多くの人がグラウンドで車中泊をしていた (c)朝日新聞社

■避難先でさらに待ち受ける困難

 4月中旬、熊本県や大分県で最大震度7の非常に強い揺れの地震が、2回も発生しました。地中から「ドーン」と突き上げるような強い揺れに加え、地震発生から約1カ月で、震度1以上の余震は1500回超。建物や橋が次々と壊れていったのです。

 2度の強い地震が発生したのは、前震が14日の午後9時26分、本震が16日の午前1時25分と、ともに夜でした。子どもを抱えたお母さんは毛布と哺乳瓶を握りしめ、体の具合の悪いお年寄りは息子さんに背負われ、命からがら家を飛び出しました。涙を流しながら避難所に向かった人もいます。

 ところが、やっと避難所に着いて「助かった!」と思ったのもつかの間、そこでも、さまざまな困難が待ち受けていました。最大20万人ともいわれる人がいっせいに避難したため、避難所には収まりきらず、小学校の校庭や渡り廊下、屋外で野宿せざるを得ない人たちが大勢出たのです。

 また、人であふれかえった避難所をあきらめて、自分の車の中で寝泊まりする人たちも少なくありませんでした。「赤ん坊が泣いて迷惑になるといけないから」「持病があって硬い床で寝られないから」「余震が怖くて建物の中にいたくないから」など、理由はさまざまです。

 ぼくが取材をした家族は、親と子どもの4人で3週間以上、車で避難生活を続けていました。避難所にいないので、食料の配給が受けられず自力で調達。

 狭い車内で同じ姿勢のまま過ごすことで体調を壊す人もいます。「エコノミークラス症候群」といって、血の巡りが悪くなり血管が詰まるなどして、最悪、死にいたる症状です。定期的に体を動かしたり、血の巡りがよくなるようにマッサージをしたり、工夫が必要でした。

■食料支援がない避難場所もある

 また、避難所にいながら、食料の確保に大変苦労した人も多くいました。

 災害時の対応などを定めた法律「災害対策基本法」のなかに、「指定緊急避難場所」と「指定避難所」という言葉が出てきます。前者は、地震や津波などからいち早く身を守るために逃げ込むことができる、高台や公園などにある安全な場所や施設。後者はそこにとどまって食料支援などを受けながら避難生活を送ることができる施設を指します。

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AERA dot.編集部
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