3.安倍内閣が集団的自衛権行使容認を欲する理由も、湾岸戦争のトラウマ、ショーザフラッグと同じ系譜

 なぜ安倍内閣は、ここまで集団的自衛権の行使容認を欲するのか? 安倍首相は、「集団的自衛権の行使を容認しないと、有事の際に、アメリカが助けてくれなくなって困る」(=アメリカ側が集団的自衛権の行使容認を求めている)と言っているのである。

 閣議決定まで終わった「集団的自衛権の行使を容認する理由」がそれである証拠として、安保法制懇のメンバーの一人で、元外務官僚の岡崎久彦氏の言葉を引用しよう(2014年5月19日ハフィントンポストに掲載されたインタビュー)。

「もう東アジアの安全保障というのがね、日中関係、米中関係なんてものはないです。中国対日米同盟、このバランスで全部考えなきゃいけない、共同で行動することを考えないかぎり、日本の安全は今考えられない。(略)一番の問題は、日米同盟が危険にさらされた時ですよね、アメリカだけ、アメリカの第七艦隊がやられていて、日本が助けにいかなかったら、アメリカもう(同盟)やめたと、そうなる可能性はありますね、それが一番怖いですね。」

4.アメリカは、日本に集団的自衛権の行使要因を求めていない?

 では本当に、アメリカは、日本が集団的自衛権の行使を容認しないと、日米同盟を破棄するのか? 日米関係を語るとき、よく「日本(が出すの)は金だけでいいのか」という議論になり、日本人に肩身の狭い思いをさせている。しかし、戦争を始めるのにも終わらせるためにもお金が必要であるという状況の中で、日本がこれまで、アメリカの戦争に莫大な貢献をしてきたことを、日本人はもっと自覚するべきである。

 実は、次の2つの要因から、アメリカから日米同盟を解消することは、特に中国の存在が、地球を良い意味でも悪い意味でも支配する現在、そして近未来において、絶対にありえない。

●アメリカにとって、在外最大の軍事拠点でありながら、主権を放棄してまで、そして「思いやり予算」まで付けてくれる聞き分けのよい同盟国は日本以外にはない。

●世界の約5分の1を担当する世界最大の艦隊・米海軍第七艦隊が、事実上横須賀と佐世保を母港としている。在日米軍基地の担当範囲は非常に広く、アメリカが関与する紛争多発地帯をほぼ包括していて、燃料や爆弾の貯蔵においても、日本は海外最大の保管庫になっている。

 ではなぜアメリカが日本に自衛隊を出すよう圧力をかけてきているように見えるのか? それは、選挙で有利に戦うための短期的な「利害」にしか興味のないアメリカの(一部の)政治家にとって、自分で勝手に「湾岸戦争のトラウマ」を背負いこんでいる日本人が、好都合だからだ。なにせ、これをちょっと耳元で囁くだけで、日本人は簡単に震え上がってくれて、お金をATMのように引き出せるようになるのだから。

 だから、「アメリカのために」という理由で、集団的自衛権の行使を、日本が容認する必要は一切ない。

 また、「国連的措置(集団安全保障)」であるPKOにすら、自衛隊を出す必要はない。それは、今現在、国連のPKO部隊(PKF)に大勢の兵を送り込むのは実は、国連加盟国の中でも発展途上国の仕事になっているからだ。
 
 国連のPKFに部隊を送ると、国連からお金をもらえるため、発展途上国にとってはいい外貨稼ぎの場になっているのだ。PKFに派遣される兵士の人数は足りているため、もう日本は、(日本では非戦闘地域と呼ばれている)PKF関連の仕事に兵(自衛隊)を送る事業から卒業していい。

 すなわち、集団的自衛権への参加にしても、国連的措置にしても、日本は、独りよがりなコンプレックスから、求められてもいないことに対して、(無知ゆえに)自ら自衛隊を海外に出してしまっているのである。

 あなたは、国論を二分している議論が、この程度の情報も与えられずに推進されていることを知っていただろうか?

【関連リンク】
『日本人は人を殺しに行くのか 戦場からの集団的自衛権入門』(朝日新書)
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=16372