消費者目線で考えると自明のことですが、「お近くのお店どこでも回収しています」という状態をつくってあげたほうが利便性は高くなります。「セブンでもイオンでも回収しているんだ」「どのお店でもルールは同じなんだ」という認識が広まれば、リサイクルにまつわる煩雑さは減少していきます。

 この社会にいる人みんなに使ってもらえる「インフラ」を目指す私たちとしても、目指すべき方向性としては正しいと言えるでしょう。

 だからこそ、1つの業界にとどまるよりも、幅広い業界からものを集めたほうがいい。なぜなら消費者もそれを望んでいるから――。これは発想としては単純ですが、日々、業界内の競争を意識している単体の企業からはまず出てこない考え方です。社員個人が頭の中で、そういうことを思いついたとしても、企業のオフィシャルな意思決定の場でまともに議論されるとは到底思えません。私自身、会社員時代はまさにそうした反応にもどかしさを感じていた1人です。

 それができたのは、日本環境設計が業界の外側の独立したポジションにいるからです。社会全体でリサイクルインフラをどうつくるかを考えているから、業界の垣根を飛び越える発想が出てきますし、それを実際に行動に移すことができます。そもそも、「業界内のライバルと一緒にこの企画をやりましょう」などと平気な顔して提案できるのは、やはり当社が業界の外側にいるからにほかなりません。

●「共通の大きな目標」で、業界内の利害関係は越えられる

 そして何よりも大事なのは、「共通の大きな目標」を掲げたことです。

 同じ業界内の企業同士の場合、業界内の順位やシェアなど、どうしても「利害関係」が気になり、一致団結することは難しいものです。

 しかし、「循環型社会をつくろう」「戦争をなくすために地上資源を循環させよう」という大きな目標を、業界を越えて共有すると、利害を越えた取り組みへと昇華させることが可能になります。一度業界の垣根を越えたら、業界内の順位といったことはどうでもよくなります。

 さらに、業界を越えた取り組みに参加することは、それぞれの企業にちょっとした気づきや機会を提供します。

 コンシューマービジネスに携わる企業は、扱う商品に違いはあっても、消費者との接点になっているという強い自覚を持ち、消費者との関係をつくるうえで、似たような課題を抱えています。

 ただ、業界内に閉じこもっていると、そのことに気づくきっかけがなかなかありません。業界を越えたリサイクルインフラに参加すると、そのことに目が行くようになり、同じテーマで話しあう機会も得られます。

 21世紀は環境の世紀とも呼ばれ、ただ「売る」だけの時代は終わりつつある――。消費者と最前線で向きあう小売業界の雄として、イオンとセブン&アイの2社もこうした問題意識を共有しているからこそ、その問題意識に沿った取り組みとして理解されたのだと思います。

 イオンとセブン&アイの同時参加をきっかけに、150もの企業・団体でつくるありえないアライアンスが実現しました。残る課題は消費者を巻き込むこと、そしてユニバーサル本社を口説くこと。それでは、誰もが参加したくなる〈ブランド〉をいかにしてつくり、「夢の期日」2015年10月21日にデロリアンを走らせたのでしょうか?