こういった経緯があり、同市は「ずっと寄付を続けてくれている堀井さんにドラクエ関連で何かお返しができないか」と、ふるさと納税の返礼品へのドラクエグッズの採用に行きついた。「堀井さんと絡めて洲本をPRできないか」という思いもあった。堀井さんにスクウェア・エニックスの担当者を紹介してもらい、15年春から、交渉を始めたという。
だが、そこからが長かった。市の担当者は当初、AR(拡張現実)技術を利用してスマートフォンでの撮影データにドラクエのキャラクターが写り込むサービスや、スライムと名産品のタマネギを組み合わせたキャラクターなどを考えていた。しかし、スクウェア・エニックス側が難色を示し、実現しなかったのだ。
いったんはあきらめかけた担当者らだったが、同社から「グッズなら協力できる」という提案があり、夏に交渉を再開。グッズの仕入れやPR方法などにまつわる、さまざまな権利関係をクリアし、16年2月、ようやくドラクエグッズの返礼品が実現した。市側の粘りが功を奏した形で、同社の担当者からは「よくここまでたどり着きましたね。奇跡だ」と言われたという。
市は今後も、2、3カ月ごとにグッズを更新していく予定だ。担当者は「堀井さんやスクウェア・エニックスの方々には大変感謝している。淡路島は知っていても、洲本市は知らない人が多い。ドラクエグッズをきっかけに、洲本についても興味を持ってほしい」と期待する。
なお、洲本市のふるさと納税返礼品は、天然アワビや淡路牛、洲本温泉の宿泊券、同市在住の作家、湊かなえさんのサイン本など、ドラクエグッズ以外も充実している。湊さんのサイン本は、サインをお願いする作品を選べるため、全作品コンプリートを目指す人もいるそうだ。ドラクエファンの人もそうでない人も、“勇者”として納税してみてはいかがだろうか。(ライター・南文枝)