また、それと並行して数々の新たな特別課税を断行した。なかでも「財産税」は、一定額を超える預貯金、株式、不動産などの財産に一回限り特別に課税するというものだが、最高税率が90%だったというから驚きだ。戦後のただでさえ苦しい生活の中で、国民にとってはまさに地獄のような状況であったと想像できる。
そのあとわずか数年で危機は収束するが、結局今の額で約1000兆円を当時の国民が負担したことになる。政府の負債と言っても、そのツケを払わされるのはつねに私たち国民だということを忘れてはいけない。
小黒教授によれば、2016年1月に導入されたマイナス金利政策も、実は国民預金への課税装置と捉えることができるという。
当たり前のことだが、通常、政府が国民の財産や所得に課税するには、国会の議決や承認が必要である。安倍政権が消費税増税を再度延期せざるをえなかったように、これは政府にとって容易なことではない。しかし、マイナス金利政策はすべて日銀の独断で行うことができるのだ。マイナスの幅にも限界の規定はなく、極端に言えばマイナス100%にすることも可能だ。
日銀はこれを利用して、日銀当座預金(民間銀行が日銀に預けている預金)の大部分を没収し、国債と相殺することで債務処理を行うことができる。日銀当座預金の原資は私たちの預金だ。これは私たちのお金が間接的に収奪されることにほかならない。
実行に移されるかどうかは別として、マイナス金利政策の導入によって、日銀と政府はそうした課税の「ツール」を手に入れたのだと小黒教授は警告する。
終戦直後のようにあからさまな形ではないにせよ、あの手この手で国民から資産を収奪するための準備が、すでに進められているのかもしれない。その意味では、国の借金の私たちへの押し付けはすでにはじまっているとも言える。そしていよいよ財政が破綻した際には、緊急措置などと称し、なりふり構わない行動に出るだろう。最悪の場合、預金封鎖や財産税といった悪夢がよみがえるかもしれない。