




屋根の上に森がある車。そんなジャングル・カーがこの夏、沖縄から北海道をのぞく日本を縦断する!
この車の持ち主は沖縄県那覇市在住の知念満二さん(57)。ご覧の通り、屋根の上はまさにジャングル。今や沖縄本島では子供や女子高生を中心に「この車を見たら幸せになれる」として人気を博しているらしい。いったいなぜ車の屋根がジャングルになったのか?
「最初はクーラーが壊れてしまったこの車で屋上緑化をしようと思ったんです。2007年頃です。当時はよく母を乗せて走っていました。母は、クーラーが嫌いなんですよ。でも僕は涼しい方が好き。そこで、緑化すれば車内が涼しくなるかな? と思って」(知念さん)。
最初は芝生を植えた。ホームセンターなどで手に入るココナツシートを利用し、その下に保水用に介護用おむつを敷いてテグスで縫い付けた。その上に芝を植える。3層構造で芝生がみずみずしく保たれる仕組みを作り、車上に取り付けた。誰もが疑問に思う車上固定の方法だが、これは「企業秘密(笑)」(知念さん)だという。ざっくり言うと、固定用パーツを作成し、防水加工を施した車上に固定しているという感じだ。
やってはみたものの、芝生が生えた車で走ると注目度はものすごく、あまりの反応に恥ずかしくなった知念さんは、一度芝生を取り外して車上緑化をやめてしまった。
しかし、芝生が生えている時点でそのユニークさは海外にも着目され、2008年には世界的な報道写真通信社であるEPA通信によりその姿が全世界に配信され、韓国、ブラジル、イタリア、メキシコ、ルーマニアなど60カ国以上の新聞に写真と記事が掲載された。各国の記者たちは、しばらくすると「その後はどうですか?」とメールでインタビューを申し込んできた。
「もう、やめてしまった」と知念さんが説明すると、どの国からも「残念だ! もう1回やってほしい」と返事が来たそうだ。
だからというわけではないが、知念さんも、もう1回やってもいいかな、やるなら今度は芝生ではなく花がいい、被覆性のヒメキランソウがいいかな……と考えていたところだったので、再度チャレンジすることになった。
2回目はココナツシートと介護用おむつなど3層だった以前の仕組みを6層に改良。それぞれをテグスで縫い付けて、「企業秘密」の仕掛けで車上に固定する。ヒメキランソウは1年のうち3月しか花が咲かないのだが、秋に車上を見たらなんと、コスモスが1本、直立して生えて花を咲かせていたという。
「あ、被覆植物だけじゃなくて、直立もいけるんだ!」と思った知念さんはコスモスの種をココナツシートに散布。車上緑化から車上花畑へ……と思いきや、なんと、知らないうちにさまざまなものが根付き始めていた。
「以前にイヌホウズキが生えて花が咲いたこともあったんですが、2010年の1月に、ガジュマルが生えているのに気がついたんです」。
なぜガジュマルが? 理由ははっきりしない。職場の駐車場がガジュマルの下だったので、実が落ちたのか、あるいは鳥やオオコウモリが散布したのか。ガジュマルは最初から2つの芽を出していて、2015年現在も健在だ。その後も、知らぬ間に屋根に根付いたさまざまな植物で、今では花畑どころかジャングルになった。