林:東京の財閥のおうちに生まれて、普通だったら、お嬢さまとしての教育を受けて、いいところにお嫁に行くのが当たり前の時代に、アメリカの大学に入って、前衛芸術をされたのは、何がきっかけなんですか?
オノ:うちの教育が非常にクラシックだったから、それに対する反発でしょうね。
林:ニューヨークでいろいろ始めたときに、ニューヨークの人でさえびっくりするようなことを、おやりになったわけですよね。
オノ:そのときは他人から突拍子もないと思われていても、いまショーン(息子)に言わせると、そんなに前衛じゃないんですって。たとえばレコーディングで、これは少し激しすぎるかなと思うでしょ。そうするとショーンが、「ママはママらしくしていていいんだよ。いまはみんなわかるんだから」って言うの。
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林:ジョン・レノンさんは、お嬢さまとして育ったオノさんの行動を見て、驚いたりしませんでした?
オノ:彼もけっこう旧式な考えを持っていたからね。朝起きて、彼がパッと新聞を取るでしょ。それがこっちはカチンとくるわけね。だって、新聞ってほかの人が読んだ後って気持ち悪いじゃない。「私はいつも先に読んでたのよ」って言うと、彼は「それじゃ、新聞を二つとろう。新聞なんて安いものだから」なんて言ってたけど、なんて女だと思ったんじゃないの?(笑)
林:芸術家同士のいろいろな葛藤があった生活だったんですね。
オノ:みんなそう思うらしいの。だけど、ジョンみたいな気の強い人とそういう間柄だったら、私は殺されてますよ(笑)。
林:とてもうまくいってたんですね。
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林:今度、来日のご予定は?
オノ:ご予定はあんまりないの(笑)。私は予定っていうものがない女ですからね。*予定をつくっても、変わっちゃうでしょ。偶然のほうが、自分の計画なんかよりはるかに大切だと思っています。
林:導かれる……。
オノ:そう。あれこれ考えた意図だとか意思だとかは大したことないんですよ。私の人生、そんなものに左右されてたわけじゃないですからね。
※週刊朝日 2020年6月5日号