

AKBグループ卒業から2年。「AKB48の知性派」と呼ばれた逸材は、表舞台だけでなく、裏方にも強い関心を持つ。女優・北原里英さんのいま、そしてこれからとは。
NGT48への移籍発表後は、3年連続で選抜入りを果たし、18年の春、惜しまれつつ卒業。以降は、女優業をメインに、バラエティーなどでも活躍している。
昨年夏には、“2年間限定の恋”の隠された秘密を描く舞台「HERO~2019夏~」に出演。元お笑い芸人の西条みつとしさんが主宰する劇団の旗揚げ公演に書き下ろした脚本を、若手俳優の廣瀬智紀さん主演、北原さんをヒロインに迎えての再演だった。その舞台を、西条さん自ら映画化したのが、「HERO~2020~」である。
「舞台の稽古と本番で、1カ月以上一緒に過ごして気心の知れた仲間と、映画を作ることができたことが幸せでした。ただ、私の演じた浅美という女性が、健気(けなげ)で女の子らしい、ある種普通の女の子だったところは、演じる上で難しかったです。よく先輩方が、“普通を演じることが一番難しい”というお話をされているのを聞いていたんですが、その言葉を今回はしみじみと実感しましたね」
ライバルたちがひしめき合うアイドルグループで、10年揉(も)まれた経験は伊達じゃない。彼女の発言や物腰の一つひとつに、華があって芯がある。
「今でも女優一本で、とは思っていないです。好きなことや得意なこと、やってみたいことなど、それぞれ大事にしていきたいです。私が一番にやりたいと思うのはお芝居ですけど、バラエティーも好きなんです。そういえばAKB48時代に、『構成作家になりたい』って宣言して、寸劇を書いたりしていたこともあります(笑)。何より私が好きなのは、たくさんの人と一つの作品を作ることです。この先、どんな巡り合わせや挑戦が待っているのか今は想像がつかないですが、ずっと変わらずものづくりに携わっていたいですね」
(菊地陽子、構成/長沢明)
※週刊朝日 2020年7月3日号より抜粋