米国内におけるコンサート収入総額と、セールス/ストリーミング/出版からのレコーディング印税を基に、年間で最も収益を挙げたアーティストTOP40をランク付けする、米ビルボードのMoney Makersレポート2019年版が発表された。
ランク入りしたアーティストたちの全体的な2019年の興行収入は、2018年の7億9,500万ドル(約840億円)から5.26%減の7億5,300万ドル(795億円)だった。また、印税収入も減っており、前年の2億2,000万ドル(233億円)から10.4%減の1億9,700万ドル(208億円)で、2019年の業界全体の手取り総額は9億5,000万ドル(約1,000億円)だった。
2019年のツアー利益は若干落ち込んだものの、2018年に引き続きアーティストの収入の大部分を占めていた。ランキングの上位に入ったエルトン・ジョンやピンクといったアーティストは収入のほとんどをツアーで稼ぎ出し、ストリーミングには強いが興行収入が比較的少なかったアーティストをランク外に押し出した。
アメリカ・レコード協会(RIAA)によると、2019年のストリーミング収益は前年比19.9%増の88億ドル(9,300億円)だったが、Money Makers TOP40アーティストに限ると、ストリーミング印税は前年比11.5%減の1億900万ドル(115億円)だった。
これが例えばドレイクや故ジュース・ワールドがTOP40入りしていれば、全く違う結果になっていた。2019年にドレイクはストリーミングで1,470万ドル(15億円)、ジュース・ワールドは780万ドル(8.24億円)の印税収入を得ているが、二人ともこの年はツアーが少なかったため、ランキングではドレイクが44位、ジュース・ワールドが53位となっている。仮に、この二人とエミネムやヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲインなどのヒップホップ・アーティストやテイラー・スウィフトなどを含むストリーミングの上位10アーティストたちがMoney Makers TOP40入りし、ランクインしたもののストリーミング収入が最も少なかったキッス、シェール、Trans-Siberian Orchestra、ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックの4組が入っていなかったとしたら、TOP40全体のストリーミング収益は2018年の1億2,600万ドル(133億円)から20%増の1億5,130万ドル(159億円)となっていた。
ジャンル別で見ると、ポップが14組、ロックが14組、カントリーが8組、R&B/ヒップホップが3組、ラテンが1組となっている。時代別には、現代のアーティストが21組、20年以上音楽活動を続けている、および/または、アルバムを10作以上発表しているヘリテージ(伝統)アーティストが19組で、ほぼ同数となっている。後者にはシェール、ボブ・シーガー、ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックなどが含まれている。前年は8組ランクインしていたR&B/ヒップホップ・アーティストが2019年は3組に減り、このジャンルのトップはポスト・マローンがトップで6位(3,420万ドル/36億円)、次いでカリードが25位(1,850万ドル/19億円)、そしてトラヴィス・スコットが40位(1,550万ドル/16億円)に入った。尚、例年のことだが、EDMアーティストがランクインしていないのは、収入の大半を占めているライブ利益を報告しない場合が多いからだ。
2019年のMoney Makersランキングのトップ・アーティスト、ザ・ローリング・ストーンズの総収入は6,500万ドル(68億6,300万円)で、【ノー・フィルター】スタジアム・ツアーの興行収入が割合のほとんどを占めている。このツアーは、ミック・ジャガーが2019年4月に緊急の心臓弁膜手術を受けた影響で数か月間延期されていた。同様に、2018年のトップ・アーティストだったテイラー・スウィフトも【レピュテーション・ツアー】のおかげで9,050万ドル(95億円)の手取り、つまりストーンズより約30億円多い収入を得ていた。この二つのツアーは、それぞれが2018年と2019年の全米最高興行収入を挙げていることから、新型コロナウイルスがツアーという重要な収入源をストップさせてしまった2020年は、アーティストにとって利益が少ない1年になることは確実で、収入の大部分を2019年のランキングでは20.7%しか占めていないセールス/ストリーミング/出版から得ることになるだろう。
◎米ビルボード2019年Money Makersレポート TOP10
1位[前年25位] ザ・ローリング・ストーンズ / M(68億6,300万円)
セールス .7M(1億7,900万円)/ ストリーミング M(2億1,100万円)/ 出版 4.3K(8,400万円)/ ツアー .5M(64億円)
2019年の全米興行収入トップに輝いたストーンズは、トータルで6,500万ドル(68億6,300万円)を稼ぎ出した。ベスト・アルバム『HONK』のリリースにより、セールスで7位に入った彼らは、今年ランク入りしたアーティストでは珍しくマスター音源を自分で所有しているため、1970年代以降にレコーディングされた楽曲の収益の74%を得ている。
2位[-] アリアナ・グランデ / .3M(46億7,800万円)
セールス .1M(1億1,600万円)/ ストリーミング .2M(8億6,600万円)/ 出版 .2M(1億2,600万円)/ ツアー .7M(36億円)
大規模な【スウィートナー・ワールド・ツアー】のおかげで全米興行収入ランキング4位に入った彼女は、アーティスト/出版印税が1,000万ドル(1億円)を超えた6アーティストの一人でもあり、これが手取りの約24%を占めている。オーディオ/ビデオ/プログラム・ストリーミング再生数が約70億回に到達し、このジャンルでも総合4位に入った。ダウンロードでは7位に入っている。
3位[8位] エルトン・ジョン / .3M(45億7,100万円)
セールス 3.4K(1億円)/ ストリーミング .2M(2億3,200万円)/ 出版 1K(6,550万円)/ ツアー .5M(42億円)
引退ワールド・ツアー【フェアウェル・イエロー・ブリック・ロード・ツアー】の2019年興収が3,950万ドル(42億円)を記録。伝記映画『ロケットマン』の影響も大きかった。サウンドトラックでは1曲しか実際に参加していないにもかかわらず、映画で彼のヒット曲の数々が紹介されたことでセールスとストリーミングが増加し、380万ドル(4億円)のアーティスト/出版印税収入を生み出した。
4位[-] ジョナス・ブラザーズ / .9M(43億1,800万円)
セールス .2M(1億2,600万円)/ ストリーミング .1M(2億2,100万円)/ 出版 .8M(4億円)/ ツアー .7M(36億円)
5位[37位] クイーン / .2M(37億1,600万円)
セールス .6M(10億円)/ ストリーミング .1M(8億5,500万円)/ 出版 .1M(3億2,700万円)/ ツアー .4M(15億円)
6位[15位] ポスト・マローン / .2M(36億1,000万円)
セールス .4M(1億4,700万円)/ ストリーミング .3M(11億9,300万円)/ 出版 .1M(3億2,700万円)/ ツアー .4M(19億円)
7位[10位] ピンク / .5M(32億2,000万円)
セールス .04M(1億円)/ ストリーミング .8M(1億9,000万円)/ 出版 .2M(1億2,600万円)/ ツアー .5M(28億円)
8位[-] キッス / .7M(28億1,900万円)
セールス 5.3K(4,300万円)/ ストリーミング 6.4K(4,300万円)/ 出版 7.6K(1,900万円)/ ツアー .7M(27億円)
9位[9位] ビリー・ジョエル / .1M(27億5,600万円)
セールス 1.9K(3,190万円)/ ストリーミング .7M(1億7,900万円)/ 出版 5.4K(1億円)/ ツアー .2M(24億円)
10位[7位] ジャスティン・ティンバーレイク / .9M(27億3,400万円)
セールス 8.8K(1,780万円)/ ストリーミング .5M(1億5,800万円)/ 出版 7.6K(5,570万円)/ ツアー .7M(25億円)