◆原子炉爆発すれば十数時間で放射能は首都圏へ◆


「死の灰」と呼ばれる放射能の健康被害は、計り知れない。
 1986年に起こったチェルノブイリ原発事故では、広島と長崎の原爆を合わせた放射能の約200倍もの放射能が放出された。福島第一原発の1、3号機を足した原子炉の電気出力は、チェルノブイリ原発の100万キロワットを超える。京都大学原子炉実験所助教の今中哲二氏は、チェルノブイリは将来分も含め"死者"は、10万~20万人と指摘しており、万が一、日本でも首都圏に飛散すれば、大量の被害者が出る可能性がある。
 原子力資料情報室の上澤千尋氏は言う。
「放射性物質は、全体的に一定の速度で広がるのではなく、風向きによって扇状に飛散していきます。『ホットスポット』と言って、雨雲などに乗って、飛び地で雨と一緒に『黒い雨』として降ることもあります」
 福島原発の場合、例えば、茨城県の上空を通過して、東京が被爆する可能性もある、ということだ。
 上澤氏によると、被曝した時の症状は大きく分けて二つある。
 
(1)急性障害 100~250ミリシーベルト超の被曝をすると、直後から数カ月以内に、めまいや嘔吐、脱毛などの症状が現れる。重篤な場合は、内臓が機能障害を起こしたり、皮膚がただれて全身ヤケドのような症状を起こしたりして、死にいたることもある。
1999年の「JCO臨界事故」では、ステンレスのバケツでウラン粉末を溶かして沈殿槽に注入したさい、核分裂が連鎖的に続く臨界状態となり、作業員2人が急性障害で死亡した。
(2)晩発性障害 数年~数十年後にがんや白血病などを発症する。一般人の年間被曝線量の限度である1ミリシーベルトでは、がん罹患率は1万人中500~1千人と言われている。それが、2ミリシーベルトになると、がん罹患率も比例して2倍になると言われている。
 このほか、被曝すると、免疫機能が下がるため、他の病気を引き起こす可能性も高くなるほか、遺伝子に傷がつき子孫への影響も懸念される。
 では、万が一、放射性物質が飛散してきたら、どう対応したらいいのか。
「とにかく、放射性物質にふれないことが重要です」(上澤氏)
 原子力安全・保安院などはこう注意を促している。
(1)屋内退避。換気扇や冷暖房を止め、窓を閉めて、外気が室内に入らないようにする。特に、雨は大気中の放射性物質を地上に降らせるため、当たらないようにする。
(2)外出する場合は、長袖、長ズボン、ゴーグル、フード付きのコートなどを着て、外気に触れないようにする。防塵用のマスクや、濡らしたタオルで口や鼻を覆う。室内に入る前に、コートなどは袋に入れて密閉し、室内に放射性物質を持ち込まないようにする。
(3)万が一、肌に付着したら、洗い流す。
(4)ヨウ素剤を服用する。
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