退職後も「こんな悪質なことをする会社が、保育園を運営していていいのか」という怒りが収まらない京子さんは、元同僚と5人で「地域福祉ユニオン東京」に加入した。

 8月上旬にユニオンから、(1)休業補償の満額支給、(2)会社に勝手に使われた有給休暇の買い取り、などの「要求書」が会社に提出された。パワハラ発言の録音もあったことから、会社は要求の主要部分を受け入れ、早期に解決する見通しだ。

 この例のように、個人で主張しても通らなかったことでも、労組を通じて要求することで局面が変わる場合がある。地域福祉ユニオン東京の市川正人書記長はこう語る。

「休業補償の満額支給など、組合を通して当然の権利を主張されたら、園側は大半の場合、認めざるを得ません。個人で闘って『パワハラ退職』を強要された場合でも、後に組合から行政に通報して指導を求め、会社に慰謝料を請求して支払いが実現した例がいくつもあります。横暴な経営者に対する怒りが出発点になるかもしれませんが、長く働き続けられる職場作りのために活動することが、一番の倍返しになります」

 保育士たちの倍返しは、まだ始まったばかりだ。

週刊朝日  2020年9月18日号より抜粋

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