人間としてのあり方や生き方を問いかけてきた作家・下重暁子氏の連載「ときめきは前ぶれもなく」。今回は、高齢者とスマホについて。
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スマホを買い換えた。
ガラケーからスマホに換えたのはだいぶ昔のことだ。近くの恵比寿駅のドコモショップに一人で出かけていった。
何気なく「そろそろスマホに換えようかな」といったら、「無理です」という人がいてムキになったのだ。誰でも使っているものが私に出来ないはずはない。反対されると俄然、反発する天邪鬼もあった。
店では、私の年齢を見てドコモの「らくらくスマートフォン」をすすめた。自信がなかったので、すすめに従ってとりあえずらくらくスマートフォンにした。
なぜ最初から、iPhoneかアンドロイドにしなかったのか、憶える手間は同じである。
私の友人に八十六歳になる女性がいる。抜群の記憶力の良さで、一度憶えた情報は決して忘れない。「生き字引」のような存在で、私も忘れたことは彼女にきいていた。
その彼女がスマホデビューをしようとショップに出かけていき、応対した男性社員に年をきかれた。
「八十五歳(当時)です」といったら、即座に、
「やめた方がいいです」
といわれたと怒り心頭。なぜ年齢でくくるのか。人はそれぞれ違うのだ。
そういえば今回、私が出かけた恵比寿ガーデンプレイスに場所を変えたドコモショップの窓口に書いてあった。
「八十歳以上の方はご家族か付き添いの方が同伴で」
そんなこともあろうかと秘書に同行してもらってよかった。
前のスマホで電話、メール、インターネットをはじめ、LINEや写真も楽しんでやっていたが、いつしか日が経ち、LINEが私の機種ではまもなく使えなくなることがわかって大あわてで機種変更したというわけだ。今度は友人や知人が一番多く使っているiPhoneにした。
一時間位ですむだろうとたかをくくって出かけたら、何と二時間半。さらにデータの移行に一時間。結局、使い方を詳しく聞かずじまいだった。