全国区でジワジワ名前が知られるようになってからはツアーに出たり、「FUJI ROCK FESTIVAL 2017」に公募枠で選ばれて出場したり、活動の幅を広げていただ。同時に、自主イベント「ブルーハワイ」を地元京都で企画したり、ZINE(自主制作雑誌)を定期的に制作販売したり、ハンドメイドな活動も忘れないでいた。彼らの作品のカラフルなアートワークも、普段はグラフィック・デザイナーとして活動するメンバーの高山燦(ギター)が手がけている。それだけに、プロデューサーに相対性理論の永井聖一、エンジニアに蓮沼執太やスカートなどを手がける葛西敏彦といったプロ中のプロがレコーディングの制作スタッフについてからの彼らは、次第にスキルも意識も高まっていく一方、成長することと自由に楽しむことの間でもがくようになっていたのかもしれない。

 解散を発表した9月30日、彼らはファンに向けてのコメントと同時に、最後の新曲「オバケな彼女」「風のように」を発表した。にぎやかで楽しい「オバケな彼女」、甘く切ない「風のように」……どちらもバレーボウイズ本来の持ち味のフレンドリーな風合いと、大人の階段を上る途中の不安を少し覗かせたようなセンチメントが交錯したグッドソングだ。バンドの“第2章”へのプロセスが実感できるだけに解散は本当に惜しまれる。ソングライターのネギの「自身の音楽活動をより私的に進めていきたいので脱退したい」との意向を、メンバー全員が受け入れる形で終演を迎えることになったという。とはいえ、長く継続していく中で、ぶつかったり悩んだりしながら成熟していく過程を見てみたかったというのが本音だ。

 新型コロナウイルスの影響もあるのでは……という声も聞こえてくるが、環境のせいにするのはたやすい。だが、ライブができない、活動が滞るといった条件はみな同じ。バレーボウイズにはむしろ、こうした状況だからこそリスナーたちを元気にしてほしかった。なぜなら、若い頃の様々な傷や失敗の上に人生があるということを、逆境にどうやって向き合っていくのかを、バレーボウイズの音楽は教えてくれていたからだ。

 メンバーはこれからも個別に音楽に関わっていくという。なお、新曲「オバケな彼女」「風のように」のCD版を付属したハンドメイドのZINE「ブルーハワイ」はあっという間に完売したという。彼らからの卒業記念の最後の贈り物となりそうだ。
(文/岡村詩野)

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