ライター・永江朗氏による「ベスト・レコメンド」。今回は北原保雄編の『明鏡国語辞典』(大修館書店/3000円・税抜き)について。
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一日に何度も辞書を引く。電子辞書やスマホの辞書アプリだけでなく、紙の辞書もよく使う。
『明鏡国語辞典』の第三版が出た。10年ぶりの大改訂である。第二版が出てしばらくしたとき、編者の北原保雄先生が「第三版は出せるかなあ……」とおっしゃっていたので、すごく嬉しい。
今回の改訂で2色刷りになり、小口に「あかさたな」が印刷されて、引きやすくなった。書体も見やすく、老眼に優しい。第二版で別冊だった「問題なことば索引」が「利活用索引」として巻末綴じ込みになった。もう紛失する心配はない。
誤用についてはそれぞれの項目に「注意」マークがついているだけでなく、巻末の利活用索引にもまとめられている。コラムのネタに困ったときなんか使えそう。まあ、あんまり頻繁に「その言葉づかい、間違っているよ」なんて指摘すると、うざいジジィだと嫌われるけど。
もちろん「うざい」も載っている。<鬱陶しい。わずらわしい>の意で、<「うざったい」の略から>とのこと。語の説明だけでなく「品格」マークがついていて「うっとうしい」「疎ましい」が紹介されている。「品格」欄は<日常的に使う言葉から、改まった場面でも使える品格のある言葉を探すことができるようにした>そうで、裏表紙の内側には一覧表もついている。
辞書の改訂といえば、どんな言葉が新たに収録されたかが気になる。今回は「サブスク」や「エモい」「リスケ」など約3500語が加わったそうだ。
『明鏡』の一足先に『新明解国語辞典』(三省堂)も9年ぶりの大改訂となる第八版が出た。こちらも語釈や用例の面白さは健在。両方の辞書を読みくらべながら引くのも楽しい。
※週刊朝日 2021年1月29日号