恐竜が栄えていた約7200万年前、空には翼竜が飛び交い、陸の川や湖にはスッポンの仲間がいた。この二つの生物をめぐる意外な新発見を紹介しよう! 小中学生向けニュース月刊誌「ジュニアエラ」5月号では、料理をしながら気づいたことが発端となった発見について詳報した。
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茨城県ひたちなか市の平磯海岸には、中生代の白亜紀後期にあたる約7500 万年前から約7千万年前にできた「那珂湊層群」と呼ばれる地層がある。白亜紀後期はティラノサウルスやトリケラトプスなどの恐竜がいた時代だ。
那珂湊層群はやや深い海底に積もった地層で、以前からアンモナイトの化石がよく出ることで知られていた。そんな地層で、2002年に、生物の骨とみられる化石が見つかった。調べてみると、骨の端が欠けていて、断面には土砂が入り込んで固まっているように見える。ということは、骨の内側は空洞なのだろうか。これは翼竜の骨に見られる特徴だ。空を飛ぶ翼竜は、体を軽くするために骨の内部に空洞がある。そこで、海外の専門家に化石のレプリカ(複製品)を送って見てもらったところ、「翼竜の肩甲骨(肩の骨)の化石だろう」との回答をもらった。大きさから考えて、翼を広げると4mほどになると推測される。こうして化石は「ヒタチナカリュウ」と名付けられた翼竜の化石として知られるようになった。
●スッポン調理の際「似ている」と気づいた
その後、那珂湊層群からは、スッポンのなかまの甲羅の化石や、白亜紀後期の海にすんでいたモササウルスという巨大な爬虫類の化石も見つかった。ミュージアムパーク茨城県自然博物館の学芸員・加藤太一さんは、2017年にこれら3種の化石からわかったことを論文にまとめた。そのお祝いに、美味で知られる「スッポン鍋」を、家で奥さんと一緒に食べたことが、新発見のきっかけになった。
「食用の生きたスッポンを1匹手に入れ、自分で料理したんです。そのときスッポンの骨の中に、ヒタチナカリュウの化石とよく似た骨があると気づきました」
次のページへ空洞ではなくスポンジ状