興味のある情報がなかなか見つからずに様々なインターネットサイトをさまよい、気づけば3時間……。ほとんどの人が一度はこんな経験をしたことがあるのではないか。これまでは、検索時に適切なワードを打ち込む、興味のありそうな情報がよく更新されるページを探しておくなど、もっぱら努力して自らの情報収集能力を上げることでしか解決できなかった。
このストレスを、東京大学の大学院生だった3人がビジネスに昇華させた新しいサービスが、Gunosy(グノシー)だ。ユーザーがフェイスブックやツイッターなどSNSのアカウントを登録すると、つぶやきや「いいね!」ボタンを押した内容に基づいて、グノシーのアルゴリズムがユーザーの興味を学習する。それに合った記事を、ニュースサイトやブログなどから探し出し、毎日25本をメールで配信してくれる。
運営会社の代表取締役、福島良典さん(25)は言う。
「大学院1年生のとき、インターネットで欲しい情報にたどりつくまでに労力がかかることに不満がありました。個人のブログや新聞社のページなどにいちいちアクセスするのではなく、一元化して見たい。まずは自分が使いたい気持ちから開発を始めました」
同級生の吉田宏司さん(24)、関喜史さん(25)と一緒に、2011年の夏休みを利用して仕組みを作り、同年10月にサービスを開始した。当初約500人だったユーザーは増え続け、今や約20万人にまで膨らんだ。創業者の3人は今年大学院を卒業したばかり。福島さんはIT企業から内定を得ていたが、それを蹴って起業の道を選んだ。
勢いを増すグノシーだが、5月に入ってネット上で一部のユーザーから批判を受け、軽い「炎上」状態に陥るという難局も経験した。グノシー独自のアルゴリズムなどなく、他サービス上の人気記事をまとめなおして配信しているのではないか、と疑われたのだ。この件について福島さんに質問すると、当然アルゴリズムは存在します、と前置きしたうえで、こう説明した。
「とはいえ、そういう批判が出てしまうというのは、まだアルゴリズムが未熟なため、使ってくれる方に不便な思いをさせてしまっているということなんですよね。口で反論しても仕方ないので、これからアルゴリズムをさらに進化させ、サービスで応えていきたいと思っています」
※AERA 2013年6月10日号