田原総一朗・ジャーナリスト (c)朝日新聞社
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イラスト/ウノ・カマキリ
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 ジャーナリストの田原総一朗氏は、コロナ禍で苦しむ企業や国民へ支援金の必要性を訴える。

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 西村康稔経済再生担当相が、飲食店での酒の提供停止を徹底させるため、店に融資している金融機関に働きかけを依頼する方針を表明した。この表明は、すぐに撤回に追い込まれたが、酒類販売業者に向けた、酒の提供を続ける飲食店との取引停止の依頼は、しばらく取り消されなかった。

 この発言は、多くのマスメディアで徹底的に批判された。たとえば、朝日新聞は7月11日の社説で、次のように強調している。

<コロナ対策の特別措置法では、緊急事態宣言などの地域では、酒を出す飲食店に時短や休業を要請・命令でき、従わない場合は罰則もある。だが、取引先を通じて経営に打撃を与えるようなことは、特措法にも緊急事態宣言の基本的対処方針にも書かれていない。

 それゆえ「働きかけの依頼」のかたちをとったのだろうが、金融庁や国税庁といった規制官庁からの「依頼」は、事実上の強制になりがちだ。一方で、金融機関は、ただでさえ資金繰りの厳しい飲食店の死命を制する力も持ちうる。結果として過剰な制裁になりかねない>

 4日の都議会議員選挙では、政府は自民・公明で過半数を獲得することを目標にしていて、自信も抱いていたはずだが、合計56人で、過半数の64議席に近づくこともできなかった。

 9~11日に読売新聞が実施した全国世論調査では、菅義偉内閣の支持率は37%で、昨年9月の内閣発足以降、最低となった6月4~6日の調査に並ぶ数字となった。不支持率は53%である。さらに、東京都民の支持率は何と28%で、不支持率は63%となっている。

 国民の多くが、菅内閣はともかく東京五輪を開催することが大前提となっていて、本気でコロナ禍を抑え込もうとすれば、当然中止を考慮しなければならなくなるので、結局、「かたちをつける」ということになったのであろう、と読んでいる。それこそが、国民に強い不信を惹起(じゃっき)させているのである。

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