屋代陽平(やしろ・ようへい、右):1989年生まれ。2012年ソニーミュージックグループ入社。19年YOASOBIプロジェクトを発足/山本秀哉(やまもと・しゅうや):1988年生まれ。2012年ソニーミュージックグループ入社。19年からYOASOBIプロジェクトの立ち上げに参画(撮影/写真映像部・東川哲也)
屋代陽平(やしろ・ようへい、右):1989年生まれ。2012年ソニーミュージックグループ入社。19年YOASOBIプロジェクトを発足/山本秀哉(やまもと・しゅうや):1988年生まれ。2012年ソニーミュージックグループ入社。19年からYOASOBIプロジェクトの立ち上げに参画(撮影/写真映像部・東川哲也)

「ウェブサイトの初期投資としてそれなりの費用がかかりますから、事業計画を出す必要がありました。3年後、5年後の展望とかを書いて、それっぽいことをいって、上の方には納得してもらった感じです」

 やりたいことを思う存分やらせるのが、「ソニーの法則」だ。「これだ!」というものを持っている人を積極的に支援する。放任に近い。それは、ソニーミュージックの文化でもある。

「小説は、音楽、映像、アニメーションなど、ビジネス展開の大きな可能性を秘めています。現に、ソニーミュージックはその分野の事業を展開していますからね」

 4歳から18歳までピアノを習っていた屋代の脳内に、あるアイデアが浮かぶ。小説は、言葉による説明になりがちだ。いっそのこと、小説を生の感覚の音楽にできないか。彼のセンスは並ではない。

■とがった感性の賜物

 YOASOBI誕生には、もう一人の才人を紹介しなければならない。屋代の同期で、ソニー・ミュージックレーベルズ第3レーベルグループエピックレコードジャパンの山本秀哉(34)だ。屋代は、小説の楽曲化の企画を進めるにあたり、山本に一緒にやらないかと声をかけた。彼はいま、YOASOBIのA&R(アーティスト&レパートリー)を務める。

 山本は、自分が演奏するより聴くのを好む。それも、なぜその曲が売れているのか、なぜ自分が「いい」と感じる曲が売れないのか、そんな背景を深掘りして考えるのがおもしろいという。入社以来、CDやゲームのパッケージの制作やゲーム会社に販促物や店頭ポップを提案して回る仕事をしていたが、一方で、そんなことをブログに書いて発信していた。

 ある日、屋代から「これ、いいよ」という言葉とともに、山本のもとに一本の動画が送られてきた。それが、ウェブ発信を続けていたAyaseの音楽で、彼の発掘につながる。とがった屋代の感性の賜物である。

 Ayaseは山口県出身で、地元ではピアノの腕前は神童と称されていた。後日、出演したテレビ番組の「情熱大陸」の中で、「音楽でご飯を食べるなんて夢だと思っていた。初給料で『バイトがやめられる』と思ってめちゃくちゃ嬉しかった」と語っている。

 YOASOBIという不思議なユニット名は、彼の発案だ。ボーカロイド(ボカロ=歌声を合成するソフトウェア)プロデューサーを“正規の顔”とすると、新たに始める活動は、いわば“非正規の顔”だ。

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