ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領(右)。ウクライナのゼレンスキー大統領(左)は「ロシアはテロ国家だ。誰も許さない。誰も忘れない」と批判した(写真:gettyimages)
ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領(右)。ウクライナのゼレンスキー大統領(左)は「ロシアはテロ国家だ。誰も許さない。誰も忘れない」と批判した(写真:gettyimages)
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 2月24日、ロシア軍はウクライナ各地の軍事施設を空爆。全面的な侵攻を開始した。AERA2022年3月14日号では、ロシア軍のこれからの動きを軍事ジャーナリストの田岡俊次さんが分析する。

【時系列にわかる「ウクライナを巡る動き」】

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 2月24日にウクライナに侵攻したロシア軍は1週間たっても首都キエフを陥落させずにいる。北のベラルーシから200キロほどだからロシア軍は2日でキエフに突入できると言われていたが、進撃は遅滞した。

 ウクライナ軍の意外な善戦と米国などが供与した対戦車ミサイル「ジャベリン」や携帯対空ミサイル「スティンガー」の効果が報じられるが、ロシア軍はキエフ近郊にはすでに到達し、同市を包囲する形勢だ。人口300万人に近い大都市に入って市街戦になれば、双方の軍と民間人に万単位の死傷者が出て、町は瓦礫(がれき)の山と化す可能性が高いから、包囲をして兵糧攻めにしつつ停戦交渉で有利な条件をのませ、ゼレンスキー大統領の辞任、親ロ派による政権交代を狙っている、と考える。

 キエフを猛爆撃して地獄とし、地上戦で多数のウクライナ人を殺し、残骸の上に親ロ派政権を作ってもそれは国民の憎悪の的となり、統治が困難になるのは必定だから、威嚇と包囲でウクライナ軍と住民を弱らせるしかロシアには手が無いだろう。

AERA 2022年3月14日号より
AERA 2022年3月14日号より

 だが仮に戦闘による被害者がさほど多くならずに停戦となり、ロシアに従順なウクライナの新政権がNATO(北大西洋条約機構)加盟をしなくても平和は期待しにくい。

 ロシアによる制圧に反感を高めたウクライナ人がゲリラ戦、テロ行動で反抗する公算は大きい。ゲリラ戦には待機、訓練、補給の拠点となる安全な「聖域」が必要だが、ウクライナはその西方のポーランド、ルーマニアなどと接しており、それらのNATO加盟国がゲリラらに拠点を与えたり、テロ集団を黙認したり、米国などの諸国からの武器供与の中継をするような行動をしたりしても、ロシアがそれらの国に侵攻して拠点を壊滅することは困難だ。

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