岩波ホールの入口(岩波ホール提供)
岩波ホールの入口(岩波ホール提供)
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 ミニシアターの先駆けとして愛された「岩波ホール」(東京・神保町)が、7月29日をもって閉館する。1968年2月に多目的ホールとして開館し、これまでに世界65の国と地域、271作を上映してきた。コロナ下により客足が遠のき、やむを得ず閉館の決断をした岩波ホール。過去の名作を振り返り、7月の閉館までに上映される作品を紹介する。

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 岩波ホールは、新型コロナの影響を受け、劇場経営が困難な状況に立たされていた。感染拡大が懸念された当初、映画館で感染者を出さないため、いち早く休館。2020年6月に「岩波ホールセレクション」として、座席数を60席に減らす感染拡大防止対策を講じて再開した。数年前から既に決まっていた改装工事にともなう休館もあり、「動員数を図りにくい状況にあった」と、岩波ホールのスタッフは明かす。

「作品を大切に世に送りたいという思いから、感染者数の状況をみて、いくつかの作品は公開延期になりました。感染拡大が長期化するにつれて、その都度、対応や判断を余儀なくされ、コロナ以前の動員に戻すために、映画館として何をするべきか悩む日々が続きました」(岩波ホールスタッフ)

 今年1月中旬に決定された閉館。やむを得ない閉館を公表した直後、映画ファンや業界人などから、惜しむ声が数多く寄せられた。

「閉館の知らせはSNSで大きな反響があり、海外でも報じられていると、知り合いの映画監督から聞きました。みなさまから、『最近は足が遠のいてすみません』などの温かいお言葉を多く頂戴しております。また、業界関係者からは『残念』『なんとかならないのですか』といった声も届いています」(同)

 現時点で、閉館後の利用方法は決まっていないという。

 岩波ホールは1974年、総支配人だった故・高野悦子さんが故・川喜多かしこさんと共に、日本で上映されることの少ない国の名作を上映する「エキプ・ド・シネマ」(フランス語で「映画の仲間」の意)という会員制度を発足させた。

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