
米国では自社株買いも制限されておらず、四半期開示も行われていますが、ご存じの通りちゃんと成長し、賃金も上がっています。このことからも、自社株買いの制限や四半期開示の見直しに関する政策は全くの無意味であることがわかるでしょう。
そして「賃上げ」。岸田首相は日本の賃金が上がらない原因を「株主」に押しつけたいようです。賃上げを強制することで一時的に給料が上がったとしても、生産性の向上が伴わないと、企業にとっては余計な負担となります。海外企業などとの競争で負けてしまうかもしれません。
競争に負けることで本業の利益は減り、結局は社員の給料を再び下げざるをえないという残念な結果になることが予想されます。
生産性が向上していないのに、強制的に株主の取り分を減らして社員の給料をいくばくか上げたところで、根本的な解決にはならないのではないでしょうか。
本質的な原因の理解と、それを解決するために本当に必要な政策の実行を望みます。
※本記事は2022年4月に本人取材のうえ編集されたものです。同年5月、岸田首相がロンドンで行った「資本主義のバージョンアップ」に関する演説は、取材時点では判明していません。
(構成/綾小路麗香)
※『AERA Money 2022夏号』から抜粋