今年も各地で大雨による被害が多発している。3日には静岡県熱海市で大規模な土石流が発生。多くの民家を押し流し、9人もの死者が出ている(8日20時現在)。同じく3日にかけて、神奈川県箱根町でも記録的な豪雨に見舞われた。人気の温泉地などの観光スポットがある自治体の災害リスクとはどのようなものか。AERA dot.では国が公開しているデータをもとに調査した。
【別府市や箱根町…人気観光地がある自治体の土砂崩れリスクは? 独自調査リストはこちら】
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「津波のように押し寄せてきて、本当に恐ろしかった」
こう語るのは、静岡県熱海市伊勢山に住む男性(70)だ。3日、同地区を大規模な土石流が襲った。
「私の自宅は大丈夫でしたが、実家は土砂で流されてしまった」
市によると、8日20時現在の被害状況は、被害家屋が131棟、死者は9名。安否不明者は22人となっている。別荘地ということもあり、居住実態がわからないことも安否不明者の多さにつながっているようだ。
この地域の土砂災害リスクはどうなっていたのか。
■「盛り土」が被害を拡大か
国土交通省が公開している「重ねるハザードマップ」で土砂災害のリスクを見てみると、同地域は「土砂崩れ」や「急傾斜地の崩壊」の土砂災害警戒区域に指定されていることがわかる。
土砂災害警戒区域とは、土砂災害が発生した際に住民の生命または身体に危害が生ずるおそれがある場所のことで、イエローゾーンとも言われる。また、家屋の損壊や著しい危害が生ずるおそれがあるなどよりリスクのある場所は土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)とされる。
熱海市で被害があった場所はもともと土砂災害のリスクがある地域だが、住宅が押し流されるような被害までは想定されてはいなかった。宅地造成のために開発され「盛り土」があったことで被害が拡大された可能性も指摘されている。先の男性はこう語る。
「この辺りは急峻で坂が多いから小さながけ崩れというのはこれまでもあったが、ここまで大きな土石流は初めて。こんな大きな被害をもたらすリスクがあるなんて全く知らなかった」