こんなシリーズが出ていたとは知りませんでした。「笑いあり、しみじみあり シルバー川柳」。仙台市で発行されている高齢者向けフリーペーパー「みやぎシルバーネット」の連載に河出書房新社への投稿を加えた川柳作品集。すでに第12弾まであり、他に特別編も。本書『シルバー川柳特別編 ババァ川柳 人生いろいろ編』は女性の句だけを集めた一冊だ。
このシリーズ特別編の特徴は「マムちゃん」こと毒蝮三太夫が「愛ある毒舌コメント」を全句につけていることで、たとえば<古希はまだ老女ではなく熟女です>(70歳)には<いや、古希はまだまだ、半熟です。80代で熟女! 長生きして、しっかり熟せよ!>、<マドンナの変貌がっかり傘寿会>(85歳)には<じゃあ次の同窓会は、仮面被って暗くしてやったらどうだ。お互いのために>ってな一言がつく。まあ、高齢者をいじっていいのは綾小路きみまろだけ、高齢女性をババアと呼んでいいのは毒蝮三太夫だけですからね。これもまた芸のうちなのだろう。
とはいえ肉体的な自虐に走りがちなこの種の川柳が私はあまり好きではない。<歯抜けババウナギかトロよファミレスで>(79歳)とか、<やっと出たあとはすかさず体重計>(87歳)とかいわれても、笑えない。加齢は致し方ない現象だが、人を年寄り扱いするなと怒ってる句がむしろいいよね。<おばあちゃん呼ばれてムカつくよその子に>(72歳)。そうだ! 軽々しく人に年齢を聞くのもやめろ。<へー本当? メールうてると不思議がる>(91歳)。そうだ! 高齢者の能力をみくびるな。
あとおもしろいのは、やっぱり夫を送る系の句だろうか。<断捨離でついに棄てたよわが亭主>(65歳)は熟年離婚? <仏壇に今でも好きとチョコを置く>(78歳)はラブラブのご夫妻。だけど極意はこれだろう。<主人逝きヤッターこれから私は自由ダ>(81歳)。一言コメントは<旦那が生き返ってきたら、ショックだろうな。なんで未亡人って、みるみる元気になるんだろうね>。当たり前だと思いますけどね。
※週刊朝日 2020年2月7日号