ザ・バーズやバッファロー・スプリングフィールドに憧れてデトロイトからLAに向かったグレンは、その途中、ルート66沿いのウインズロウに寄っていたのだろう。「フォードのトラックに乗った女の子が近づいてきて?」は実体験だったのかもしれない。ちなみに、97年に僕が訪ねたときはまさにただの街角だったその場所には、のちに記念碑が建てられてしまった。ウインズロウだけでなく、ルート66の沿線では、モニュメント化や観光地化がじわじわと進んでいるようで、あくまでも個人的な意見だが、ちょっと残念に思う。

 さて、そのバッファロー・スプリングフィールドの中心人物として評価を確立し、現在も精力的な活動を展開しているニール・ヤングは、中古の霊柩車で故郷トロントからLAを目指した。いかにもあの人らしい逸話だが、のちに彼はルート66を走る途中に立ち寄ったと思われるニューメキシコ州の町を歌にしている。75年発表の『トゥナイツ・ザ・ナイト』に収めた「アルバカーキ」だ。

 リトル・フィートのメイン・ソングライターだったローウェル・ジョージは生まれも育ちもLAだが、トラック・ドライヴァーの視点で書いた初期の名曲「ウィリン」には、ニューメキシコ州トゥカムキャリというルート66沿いの町の名前が歌い込まれている。

ニューメキシコ州トゥカムキャリのブルー・スワロウ・モーテル(撮影/大友博)
ニューメキシコ州トゥカムキャリのブルー・スワロウ・モーテル(撮影/大友博)

 テキサス州からニューメキシコに入って最初に出会う町トゥカムキャリには街道沿いにモーテルや飲食店が並んでいて、かつては、旅人やトラック・ドライヴァーがほっと一息つける土地だったようだ(とくによく知られたブルー・スワロウ・モーテルは静かな佇まいのいい宿だったが、ここもまた、経営者が変わったこともあり、派手にリノヴェィションされてしまったらしい)。

 ほかにも、ブルース・スプリングスティーンが歌った「キャデラック・ランチ」、名曲「コーリング・ユー」を生んだ映画『バグダッド・カフェ』の撮影地など、ルート66沿いの魅力的な土地をあげていったら、きりがない。

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