
ストーリーはないゲームの映画作品に、脚本づくりから参加した二宮和也さん。ともに作品を作るスタッフやキャストたちの、純度の高い意見を吸い上げられるようにしたい──。真っすぐな信念が垣間見えた。AERA 2025年8月25日号より。
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──「8番出口」は無限ループする地下道を歩き、次々に起きる“異変”を見つけながら8番出口から外に出ることを目指すシンプルな“異変”探しゲームだ。多種多様な“異変”の不気味さ、ユニークさに全世界累計販売本数190万超という大ヒットゲームになったが、ストーリーはない。その実写化となる映画「8番出口」で二宮が演じる役名は「迷う男」だ。ゲームキャラそのままのビジュアルが話題となった河内大和の「歩く男」、小松菜奈の「ある女」、浅沼成の「少年」など、全員名前はなく、無機質にも感じる演出が施されている。
もちろんこの人(迷う男)が主軸ではあるんですけど、僕は基本的に主役がいない作品だなと思っています。心情を深掘りするよりは、登場人物を並べてどう面白い展開ができるだろう、と考えながら作った面が強いですね。お芝居も「もう1段階ギアを入れる」「ひと皮剥ける」みたいなものを目指すよりは、極力シンプルにして、全体の構成を組み立てることに注力しました。
口を出すだろうから
一番迷ったのは、やっぱり原作にストーリーがないってこと。ガワだけそれっぽくて中身がめちゃくちゃになることを一番恐れていたので、ゲームユーザーがついてこられる延長線上にある物語を模索しつつ、普遍的なものに寄り過ぎると単調になるので、いろいろな波も作って、それをどこに持っていくか話し合いながら、撮影していきました。
──今回、脚本づくりから参加した、その経緯を尋ねた。
一番の理由は、おそらく現場でものすごく口を出すことになるだろうと予想したからです。なぜなら、前半は特に、あの河内(大和)さん演じる“おじさん”が前から歩いてくるくらいで、ほぼ僕一人のシーン。僕のなかで整合性が取れてないと成立しないと思ったんですね。もらった台本のままお芝居するとなると、どこかで必ず歪みが出てくる。それは監督もなんとなく感じていて、「(一緒に脚本づくりから)やらない?」と誘ってもらったので、「助かるな」と思いました。僕が言いたいことを言えるように入っておいたのに、「脚本協力」と名前を出していただいて、随分、高貴な位置に置いていただけたなという印象です(笑)。
──台本が出来上がり、撮影が始まってからもアイデアを出しあう作業は続いた。