一般的な感覚としては、伊集院が現在ブレークしているという印象は薄いかもしれない。でも、改めて考えてみると、伊集院がさまざまな番組でコメンテーター的なポジションで起用されて、鋭いコメントを発して、それがSNSで話題になったり、ネットニュースで取り上げられたりするケースはどんどん増えているような気はする。

「あの人、最近よく出てるね」というような「浅く広く」のわかりやすい形のブレークではなく、ピンポイントで深く刺さる形の「ステルスブレーク」をいつの間にか実現しているのではないか。

伊集院の強みとは?

 伊集院の強みは「圧倒的な知識量」だと言われることがある。たしかにそれは重要な要素ではあるのだが、単純な知識量だけなら彼より優れている学者や各分野の専門家はたくさんいるだろう。

 伊集院の本当の強みは、番組で取り上げられているテーマや事象について、知識と経験に基づいた自分なりの解釈を誰にでもわかりやすい形で話せるということにある。

 ラジオではその作業を時間をかけてじっくりと行うことができるのだが、テレビでは尺が限られている。その短い持ち時間の中で、ほかの人には言えないような密度の濃い鋭いコメントを発するのが、彼のテレビ芸の本質である。

 もちろん、伊集院はただの解説者や評論家ではないので、そこに笑いの要素を加えることも自在にできる。知識、分析、笑いの三段構えで、どんな分野の話題も自分にひきつけて処理してみせる。テレビ制作者から見れば、これほど頼もしい人材はいない。

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