実績だけを見れば、ゆりやんは抜群のセンスを持った優等生的な芸人である。吉本興業のお笑い養成所「NSC大阪」を首席で卒業し、芸歴わずか2年で日本一のピン芸人を決める『R-1グランプリ』(当時の表記は『R-1ぐらんぷり』)の決勝に進んだ。

 そこからも勢いは止まらず、テレビの仕事もどんどん増えていき、2017年には『女芸人No.1決定戦 THE W』の初代王者となり、21年には『R-1』で悲願の優勝を果たした。現在はハリウッドスターを目指しており、年内には渡米してアメリカを拠点に活動する予定だという。

漂う嫌われている雰囲気

 そんな輝かしい経歴の割に、ゆりやんの世間一般での評価はまだ十分とは言えない。率直に言うと、一定の割合の人には避けられているというか、嫌われている雰囲気を感じる。

 ゆりやんの芸風を、あえて乱暴に一言で言えば、「わけのわからないことを延々とやり続ける」だ。バラエティ番組で普通に話をするような場面でも、しつこくボケを挟み込んだりする。そういうところが一部の人にはわがままだとか面白くないなどと思われたりすることがあるようだ。

 自分が言ったボケがウケなくても、ゆりやんは決して折れない。あえて空気を読まずに、さらにボケをたたみかけたりする。その感じが苦手な人は、ゆりやんが苦手なのだろう。一お笑いファンとしては、彼女のような才人がいまだにそのように思われている状況をずっともどかしく感じている。

 言うまでもないことだが、ゆりやんがわけのわからないボケを連発するのは、笑いのためにわざとやっているのだ。悪役レスラーが凶器攻撃をしたり竹刀を振り回したりするのと同様に、それは一種のパフォーマンスである。

 しかし、パフォーマンスがあまりにも真に迫っていると、それが演技であると理解されないことがある。悪役レスラーが本当に極悪非道な人間だと思われたり、「あえて空気を読まない芸人」が「空気を読めない芸人」だと思われたりする。

暮らしとモノ班 for promotion
大人向けになった!「プラレール リアルクラス」は飾って良し、走らせて良しの再現度にときめく
次のページ
二人に通じるもの