乳幼児期から英語の童謡のCDを流したり、動画を鑑賞したり。「おうち英語」に取り組む親の多くは、「英語学習は早ければ早いほど効果が高いのでは」と期待しています。子どもの第二言語習得を脳科学的に研究してきた早稲田大学教授の尾島司郎さんに、効果や注意点を聞きました。AERA English 特別号「英語に強くなる小学校選び 2025」から紹介します。

MENU 開始年齢とともに大事なのは、インプットの量 英語学習を始めた年齢によって到達度が異なる ノンネイティブに向けた教材や動画は有用 子どもが「見たい、聞きたい」と思う英語環境を整える

開始年齢とともに大事なのは、インプットの量

 自宅で流ちょうに英語を操る能力を獲得した子どもがSNSなどで話題になり、注目される「おうち英語」。幼いうちから英語を身につけさせたいと考える親も多いだろう。

 早稲田大学教授で、早期英語教育や第二言語習得を研究している尾島司郎さんは、英語を学び始める年齢の影響について、「単純に早いほど効果があるとは言えません。開始年齢とともに大事なのは、聞く、見るといったインプットの量です」と話す。

「子どもは言葉を大量に浴びて、インプットの例から自分の中でルールをつくり上げていきます。インプットだけで第二言語を習得できるわけではありませんが、まず大量のインプットがあって、かつ、そのインプットが定着していないと話す、書くといったアウトプットにつながりません」

 英語をネイティブのように自在に操れるほどの効果を得るまでには、幼少期のうちに数千時間の接触が必要であることがわかってきている。一般的に、日本の小学校から大学まで、授業中ずっと英語に触れていても「多く見積もって1500時間ほど」(尾島さん)。日本人にとって数千時間の接触はハードルが高いと言えよう。

「社会的にやらなくてはいけないことが少ない乳幼児期のほうがインプット時間を多く確保でき、親の努力によって英語に触れる環境もつくりやすいのは間違いありません。この点では、早期に英語学習を始めることに優位性があると言えます」

英語学習を始めた年齢によって到達度が異なる

「第二言語学習の開始時期により、学習時間と習熟度にどのような差が生じるか」を示した図。第二言語の習得プロセスには「暗示的学習」と「明示的学習」がある。年少の学習者は、自然に言語に触れて無意識(暗示的)に規則を身につける一方で、 中高生など年長になると、文法などを「明示的」に学ぶ。幼少期から大量の接触時間を確保することがネイティブレベルに近づく条件の一つと言えるが、英語に継続的に触れることが難しい日本では早く始めるほどいいとは言い切れない。

 別図は、尾島さんが研究を重ね、「第二言語の学習を始めた時期により、学習時間と習熟度にどのような差が生じるか」を示したものだ。 

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AERA with Kids+編集部
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