トヨタグループの世界販売台数の推移(1~6月)

 杉浦さんは続ける。

「今回の決算発表は、日米両国の中央銀行が金融政策の方向性を示した直後で、トヨタにとって不運と言えば不運なタイミングでした。円安が続けば相当な儲けが出ると見込まれていますが、円高が進んだことで、それもおぼつかなくなりました」

 4~6月期の期中平均の為替レートは1ドル=156円で、25年3月期通期の為替レートの前提1ドル=145円よりも10円程度円安の水準だ。

 市場関係者の間では、これまでこの為替レートの前提は「保守的」「固め」の数字などとみなされ、こうした前提でつくられた通期の業績見通しも、いずれ引き上げられるとの期待が持たれていた。

 しかし円高が進めば、そうした期待もはげ落ちる。トヨタは25年3月期通期の連結業績予想を売上高が前期比2%増の46兆円、純利益が同約28%減の3兆5700億円のまま据え置いた。

 杉浦さんは言う。

「今回の決算をみる限り、通期業績の上方修正は難しそうだな、との印象を持ちました。とはいえ、円安による利益押し上げ効果が落ち込むことで、より鍵を握るようになるのは、生産・販売台数がどこまで挽回できるか。その意味で、佐藤恒治社長が言う『足場固め』の真価が問われているといっていいでしょう」

 佐藤社長は、トヨタ本体やグループ会社の不正問題が相次いだことなどを受けて、今期は安全や品質の徹底、人材の育成など、クルマづくりの基盤強化に「意志を持って」取り組んでいく姿勢を示している。その成果は見られるか。

(AERA dot.編集部・池田正史)

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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