長焦点500mmをカバーする35mm判フルサイズ対応の超望遠ズームである。手持ちでの使用を考慮したサイズにまとまり、補正効果4.5段の手ブレ補正(VR)機構も搭載、超望遠域が気軽に楽しめる。
三脚座を外せば重さはだいたい2kg。実際に手にすれば重みは感じるが、焦点距離500mm・F5.6のレンズであると思えばかなり軽い。使い慣れるに従って500mm、あるいはテレコン付きの700mmでも自在に振り回すように扱えるのだから重宝する。
TC-14E IIIを装着してもAFは快適に使える。ちなみに今回使用したD810では、中央部5点と中段左右各3点の計11点の測距点がf8に対応する。これ以外の測距点でもAFは作動するが精度は保証外のため、使用するカメラのf8対応測距点の位置は把握しておこう。
手ブレ補正機構は、以前よりもカメラの電源を入れてからファインダー像が安定するまでの時間が短くなっている。また、動体用のSPORTモードでもファインダー像の安定に配慮され、動きを追いやすく流し撮りなどにも有効に作用する。
動体相手では、被写体の動きを止める必要から相応の高速シャッターに設定するため、2段分ぐらいがきっちり補正されれば十分だが、500mmぐらいになると三脚使用でも場合によってはブレることがある。4.5段分という補正効果を過信せず、シャッター速度には注意したい。
このクラスのレンズには、シグマやタムロンの150~600mmF5~6.3が人気。本レンズはズーム域は狭いがそのぶんズーム全域で開放F5.6としている。このあたりはメーカー純正の意地だろうか。とはいえ、実用性を考えると、絞り開放から使えるのが望ましい。その期待に応えるがごとく本レンズの描写は絞り開放から見事だ。500mm絞り開放でコントラストの低下がみられるが、これも比較してわかる程度で実用上は問題ない。
とてもシャープで力強い線描写と美しいボケ味、周辺まで破綻のない描写が絞り開放から得られる。TC-14E IIIを使ったときでも描写はほぼ損なわれない。絞りf11までが実用範囲で、それ以降は絞りによる回折の影響でシャープさは低下し始める。開放f5.6やf8の描写は間違いなく高性能レンズといえる。操作、描写性も高次元にまとまり、行き届いている。使っていて気分がよいレンズだ。
◆ 竹中隆義
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●焦点距離・F値:200~500mm・F5.6●レンズ構成:12群19枚(EDレンズ3枚)●最短撮影距離:2.2m●最大撮影倍率:0.22倍●画角:12°20′~5°00′●フィルター径:Φ95mm●大きさ・重さ:約Φ108×267.5mm・約2300g(三脚座を含む)、約2090g(三脚座なし)●価格:18万9000円(実売17万100円)