デビュー直後の妊娠発覚、そして最愛の夫の死を乗り越えたAwichさん。残された自分の命とエネルギーを何のために使うのか。その覚悟を語った。AERA 2024年3月11日号より。
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14歳の頃に2PACの音楽に出合い、ヒップホップを知った。ラップに乗せるのは、自身の経験や助けになったこと、家族や仲間との会話、思い、生まれ育った沖縄について。つまり日常のすべてだ。
2020年のメジャーデビュー後、日本のヒップホップシーンを一気に駆け上がり、「女王」と呼ばれるまでになった。だが、その道のりは決して順風満帆ではなかった。
06年、19歳の時にデビュー。その2年後、留学先の米国で出会った夫と恋に落ちた。娘を妊娠していることが分かり、音楽活動からも離れた。そして、娘が3歳の頃、最愛の夫が射殺され、この世を去った。
「めちゃくちゃ怒りがこみ上げて悲しくて、つらくて。周りの大人は娘に『お父さんは長い出張に行った』とか『遠いところにいる』とか嘘をついていたんですけど、私は娘が死というものの意味が分かるまで、毎日何時間もかけて話しました。お父さんとはもう一生会えないし、一生手も繋げない、抱きしめることもできない、声を聞くこともできないって。それを理解できた時に、彼女なりにどう生きていくかを考えられるはず。娘に選択肢をあげたかった」
一方で、自身は何もやる気が起きず、寝てばかりいたと、当時を振り返る。夫の死から2年ほど経った頃、父に声をかけられた。
「いつまでこんな生活してるんだ? つらいのはお前だけじゃないんだからな」