
映画学校卒業後、映画製作への道を歩もうとしていたときに、「セーラー服と機関銃」や「台風クラブ」「お引越し」などの相米慎二監督と、ある意味運命的に出会った。
「たまたま『相米監督が若いやつを探している』と言われたんです」
約1年、相米信二監督に師事した。
「相米さんって、どこか仙人みたいなところがあって、何もしゃべらないんです。くっついてはいましたが、一体この時間は何なんだろうと、意味もわからず一緒に過ごしていました。『相米が弟子をとるってどういうことなんだ』と不思議がられたりもしました(笑)」
独り立ちをしてからも、相米監督にはシナリオを見てもらったりしていた。
「ダメなときは何もおっしゃらない方なんです。そんな相米監督が、唯一反応してくれたのが、この作品のもととなった物語でした。そこから形になるまで時間がかかってしまいましたが」
本作でも、長回しのシーンなど、相米監督の特徴的な作風に影響を受けた撮影法もあるという。
「もちろん影響を受けているからですが、長回しって、どうなっちゃうんだろうという大変さとワクワクさが両方あるんです」
相米監督の代表作のひとつ、「ションベン・ライダー」で主人公を演じた永瀬正敏が、本作にも出演する。
「初めてお会いしたとき、相米監督のお話を2時間ぐらいされました。方向性は違いますが、『ションベン・ライダー』で藤竜也さんが演じたような役どころです。台本を読んでいただき、永瀬さんに出ていただく意図を感じ取っていただけて演じてくださいました」

どこか「スタンド・バイ・ミー」的雰囲気ももつ本作のロケ地となったのは、岐阜県の飛騨地方。
「原作の舞台は僕が生まれ育った鳥取なのですが、当時の雰囲気を残している場所があまりなかったんです。飛騨に来たときに、その風景ばかりでなく、空気感にもなつかしさを感じ、ぜひここでということになりました。撮影で使った線路は廃線なのですが、観光用に運転体験の車両を走らせているなど廃線なのに生きている線路という素晴らしい条件が整っていたのもよかったです。瞬が電車を追いかけて走るシーンなども、けっこうな距離を走っていたので、町の方にも交通整備などで相当ご協力いただきました」