クリーニング業界の健全化を目指す「NPO法人クリーニング・カスタマーズサポート」の鈴木和幸理事長は、「業者が意図的に洗たくを先送りしている側面もある」と話す。

「クリーニング業界は、繁忙期と閑散期の差が激しいんです。大量の冬服が出される春先と、夏や秋の閑散期では、入荷量が4~5倍ちがうこともザラ。なので、保管クリーニング商品の洗たくを閑散期に散らせば、工場の稼働率を一定にキープできるメリットがあります。さらに保管料までとれるのだから、業者によっては、相当“おいしい”商品なのです」

 それでは、クリーニング業法をもとに、業者の衛生管理指針などを定める厚生労働省は、この実態をどう受け止めるのか。生活衛生課の担当者に、前出のヤマダさん、タナカさん、サトウさんの証言を伝え、見解を求めると、こう返ってきた。

「各事案の詳細を把握していないので、衛生上問題があるか判断することは難しい。ただしクリーニング業法は、洗たく物の処理方法について顧客への説明義務を定めているので、『いつ洗うのか』をふくめ、顧客の合意を取ることは最低限必要だと考えます」

 利用者の大半は、「すぐに洗たくされて清潔な倉庫で保管されている」と思っているはずだ。大切な洋服をカビだらけにされる実態があるとしたら、消費者への“裏切り”にほかならない。

(AERA dot.編集部・大谷百合絵)

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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