これら下請け業者の声を、Xはどう受け止めるのか。運営会社のY社に取材を申し込むと、「株式会社Yは、株式会社Zが全株式を取得し、事業の詳細の把握や改善に着手している途中であり、現時点では取材を辞退せざるを得ない」(※原文は社名実名)と、Z社と連名の文書が届き、回答を拒否された。
前出のタナカさんは、X側の事情について、こう推察する。
「Xは、店舗に行く必要のない宅配クリーニングの業態で、ネットを中心に急激に人気が出た。設備や人手の準備ができていないのに、全国から大量の商品が集まった結果、衣類を適切な環境で保管できなかったのでしょう。下請け業者のなかには、『十分な金額をもらえないなら、それなりの仕事しかしない』と考える業者がいてもおかしくない。悪い口コミが命取りになるこの業界で、品質が安定しないのは、大きなリスクになると思います」
一方、サトウさんは、「Xに限らず、商品の保管環境に問題がある企業はほかにもあるのでは」と疑っている。「きちんとした保管庫を年中稼働させるのは、光熱費などかなりのコストがかかりますから。以前業界紙で、防虫剤や脱酸素剤を入れた袋に衣類を詰めて保管している企業の事例を見たことがあります」