
日本では変異株の発生動向を把握するために、国や自治体で新型コロナのゲノム解析をしている。この結果を、以前は国立感染症研究所が取りまとめてGISAIDに登録していたが、今年から体制が変わり、各自治体で登録することになったという。そして、川崎市健康安全研究所として今回初めてGISAIDに登録したところ、トラブルが起こったという。
担当者はこう嘆く。
「ゲノム解析ソフトを使って何の株なのか結果を出していますが、その結果はパソコン上でボタンを押すことで、そのままGISAIDに登録されるシステムになっています。今回はオミクロン株という結果が出ていたので、その結果がそのままGISAIDに登録されるはずが、なぜかデルタ株に変わっていました。
その他にもアルファ株もあることになっていましたが、いずれの株も実際には検出されていません。現在、GISAIDにデータの削除を依頼しているところです」
10日夜の時点で確認したところ、GISAID上ではデルタ株とアルファ株のデータは削除されたようだ。
今後について、担当者はこう語る。
「どこでどういった問題が起きて、間違ったデータが公開されたのか、原因はまだわかっていません。今後GISAIDとやり取りして、対応を考えるところです」
■原因の解明を
今回の「騒動」について、渡航医学に詳しい関西福祉大の勝田吉彰教授はこう指摘する。
「変異株の流行状況を見るためのデータベースですから、まずは正確な情報が公開されるシステムをしっかりと整えることが重要です。何がエラーの原因だったのか、しっかり解明してほしい。
他方で、データを閲覧する側も注意する必要があります。今回であればデルタ株がその後も出ているのか、他の地域でも同じように発生していないか、なども見る必要がある。心配すべき状況なのかどうか、早計に判断しないほうがいいです」