■香港
香港の航空業界のMCCへの動きは早かった。コロナ禍前には、LCCの香港エクスプレス、MCCの香港航空、FSCのキャセイパシフィック航空という住み分けだった。
香港航空は座席間隔も広く、機内食が無料で提供されるが運賃は安め。MCCとして人気だったが、コロナ禍に機内食サービスが中止され、ルールもLCCに近づいた感がある。
その分、いまはLCC並みの運賃を設定している。夏休みの8月11日発、16日帰国の運賃は往復で6万円台前半。同じ時期のキャセイパシフィックは7万円台半ばだ。
■台湾
台湾のスターラックス航空は、エバー航空を運営する台湾の海運・航空大手、エバーグリーン・グループの後継者争いから生まれた航空会社だ。2020年に運航を開始した。
スターラックス航空は当初MCCをめざしているように映った。運賃はLCCより高いが、エバー航空やチャイナエアラインというFSCよりは安い設定だった。
しかしスターラックス航空はFSC。機内食も好評だった。エバー航空やチャイナエアラインにない新鮮さで、台湾の中間層の人気をつかんでいく。日本でいえば日本航空や全日空に飽きた客層をつかんだということか。
その勢いで運賃もあがり、いまやエバー航空、チャイナエアラインと肩を並べるほどの運賃設定になってしまったが、大阪在住で台北との往復にスターラックスを使うというHさん(52)は、
「同じ運賃なら、スターラックスを選びますね。コスパは上です。機内食はいい食材を使っています。カクテルの無料サービスが行われるときもあります。それにスタッフの対応がいい。きびきびしています」
と話す。つまり、相対的にお得感があるということのようだ。
■タイ
タイ・スマイルは、FSCのタイ国際航空を飛び出したメンバーでつくられた航空会社だ。
残念ながら日本には乗り入れていないが、タイの国内線や東南アジアで路線を増やしている。運賃はLCCとタイ国際航空の中間。預ける荷物は無料で、タイ国内線でも軽食だが機内食も出る。
(下川裕治)
■しもかわ・ゆうじ 1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」(週)、「沖縄の離島旅」(毎月)。