人工生命を搭載したアンドロイド『オルタ3』がオーケストラを指揮して歌う、渋谷慶一郎『Scary Beauty』が初海外公演を実施
人工生命を搭載したアンドロイド『オルタ3』がオーケストラを指揮して歌う、渋谷慶一郎『Scary Beauty』が初海外公演を実施
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 人工生命を搭載したアンドロイドが人間のオーケストラを自律的に指揮し、それを伴奏に自ら歌うアンドロイド・オペラ【Scary Beauty(スケアリー・ビューティ)】、初ののドイツ公演が3月13日にデュッセルドルフで開催された。
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 本公演は、展示、映像、カンファレンスを通じてテクノロジーとアートを考えるフェスティバル【Hi, Robot! Mensch Maschine Festival】のオープニング・プログラムとしてロバートシューマンホールで開催。株式会社ミクシィ、国立大学法人大阪大学、国立大学法人東京大学、株式会社ワーナーミュージック・ジャパンによる4社共同研究プロジェクトとして、人間とのコミュニケーションの可能性を探るために開発された人工生命×アンドロイド『オルタ3』の海外初披露公演となった。

オペラ【Scary Beauty】は、2018年7月に世界初演が行われていたが、今回のドイツ公演では2018年に出演したオルタ2から、さらにアップデートされたオルタ3が出演。アクチュエータの高出力化、ボディ剛性のアップ、両眼にカメラを搭載し、スピーカーモジュールを採用して実際に口許から発声し歌うなど、幅広く改良・刷新が行われた。渋谷慶一郎氏いわく「表情と動きがよりシームレスになった」オルタ3を一目見ようと、デュッセルドルフ:ロバート・シューマン・ホールには国内外より約1,000人を超える観客と関係者が集まり、満員となる盛況ぶりを見せた。

ドイツ国内での期待値の高さをうかがわせる中、冒頭に今回の【Hi, Robot! Mensch Maschine Festival】主催者であるBettina氏(tanzhaus nrw)が、木村弘毅氏(株式会社ミクシィ代表取締役社長)、池上高志氏(国立大学法人東京大学教授)を紹介。その後、鳴り響くSEのなかステージに渋谷慶一郎氏が入場すると、ピアノ&コンピュータによるソロ演奏が始まった。そして、デュッセルドルフ日本フィルハーモニー管弦楽団が入場し各セクションのチューニングが終わると、オルタ3のタクトにより「Third Mind」が本公演のオープニングを飾る。

人間とは異なるオルタ3の指揮に翻弄されるピアニスト渋谷慶一郎氏とオーケストラ達。それぞれが息を飲みながら「彼/彼女/それ」を追いかけカオスティックな音像空間が生まれる。続く「Fragment」では活き活きと、時に穏やかに強弱をつけて演奏を指揮するオルタ3の姿に、会場の視線は釘付けとなり緊迫感に溢れたステージが繰り広げられた。

次に、渋谷慶一郎のコンタクトで「Scary Beauty」へ。演奏がスタートししばらくすると、オルタ3が突如客席方向へと回転。激しいライティングに照らされ、会場のあちこちに視線を向けながら歌うその表情は、人工生命による昂揚感すら感じられるものであった。歌、指揮、歌、指揮と挙動がより激しくなったオルタ3と、渋谷慶一郎氏&オーケストラの面々による演奏が会場の雰囲気を一変させ飲み込んでゆく。演奏後に一瞬の静寂があったのち拍手喝采が巻き起こった事が印象深い。

続く「The Decay of Angel」「On Certanity」では、よりアンドロイド・オペラとしての”歌いながら指揮する”異質性が強調されるパフォーマンスが行われ、オルタ3自身が観客に向け一礼する場面も。
オルタ3、渋谷慶一郎氏に加え、ことぶき光氏、池上高志氏(国立大学法人東京大学教授)も登壇したカーテンコールではより一層大きな拍手が巻き起こった。

アンコールとして「Scary Beauty (Alter3 & Piano ver.)」も初披露され、初めて海を渡った『オルタ3』の世界デビューとも言える初公演は、鳴り止まないざわつきを残して大成功に終わった。

◎公演情報【Scary Beauty】
2019年3月13日(水)
ロバードシューマンホール
01. Third Mind
02. Fragment
03. Scary Beauty
04. The Decay of Angel
05. On Certainty
EN01. Scary Beauty (Alter3 & Piano ver.)