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 二世帯住宅のTさま邸には、玄関が二つ。1階部分は親世帯であるお母さまの居住空間、2階に子世帯のTさまご家族が暮らしている。当初は完全分離にするつもりだったが、上下階の往来を楽にするため、扉を設けることになったという。

 1階のお母さまの居住空間の特徴は、リビングと和室がフラットにつながって一体感を演出していることだ。また、いわゆるダイニングがないことも特徴だろう。お母さまはタバコ店を営んでいるため、できるだけ食事を手早く済ませるのが習慣。キッチンでつくった食事は、備え付けのカウンターで食している。

 食事も後片付けも無理なくできると、好評だ。時折、お孫さんがやって来て、一緒に食事をしたり、本を読んだり、楽しく交流している。また、キッチン側からそのまま中庭にも出ることができる。中庭は、アウトドア派のTさまご主人が、家族全員でバーベキューを楽しむために、切望したのだという。

 1階の玄関脇にはコンパクトな居室があり、ここでタバコを販売している。小窓を介して近所のお客さまとコミュニケーションを楽しむのがお母さまの毎日だ。

 そして2階の子世帯であるTさまご家族の居室は、明るい光に満ちた快適な空間となっている。

 リビングとダイニングが一つの空間となっていて、南側に面した広く大きな窓からたっぷりと光が入り込む。天井は高く、しかも傾斜しているため、広い空間にダイナミックなアクセントを添えている。ご夫婦の主室は、このパブリックスペースに隣接した和室。窓からは、京都の夏の風物詩「五山送り火」のうち西賀茂船山の「船形」が間近に見えるという。

 キッチン脇には大収納空間「蔵」があり、その上が子ども部屋だ。短い階段を上がると、そこには扉がなく、そのまま子ども部屋が見渡せる。ご夫妻もお子さまも、お互いどこにいても気配が感じられるようにとの配慮からだ。

 1階のお母さまの居室は店舗を起点にソトの空間とつながり、2階のTさまご家族の居室はパブリックスペースを中心にご家族が容易にコミュニケーションできるようにつながっている。親世帯と子世帯がお互いに気遣いながら、それぞれの暮らしを楽しんでいる素敵な二世帯住宅となっている。

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