ワン・ダイレクションがついに始動した。2011年のデビュー盤『アップ・オール・ナイト』から、昨年リリースした4thアルバム『フォー』まで、全作がアメリカをはじめ、オーストラリア、スウェーデンなどでNo.1デビューを果たし、この4年で瞬く間にトップスターに上り詰めたワン・ダイレクション。
“11月は1D”
これまでリリースした4枚のアルバムが、すべて11月リリースだったことで、毎年11月には彼らの新作が拝めるのを、ファンも心待ちにしていたのだが、今年はゼイン・マリクの脱退という衝撃のニュースが飛び込み、秋にリリースされるオリジナル・アルバムのリリースも危ぶまれるのでは…と、焦燥感に駆られていた。そんな不安も束の間、夏先にリリースされるアルバムからの先行シングルを、今年も“みんなとの約束どおりに!”と言わんばかり、届けてくれたからだ。
タイトルは「ドラッグ・ミー・ダウン」。全米のトップ・アーティストであるビヨンセやドレイク等にならって、“広告・宣伝、予告ナシ”というサプライズ形態でリリースし、82か国のiTunesチャートで首位デビュー、ツイッターのトレンド入りも果たすという、たった1週でとてつもない記録を打ち出す好スタートをきった。
また、僅差でリリースされた、ワンダイの弟分こと5SOS(ファイヴ・セカンズ・オブ・サマー)の新曲「シーズ・カインダ・ホット」も絶好調で、その勢いを受けてか、7月30日にラジオ各局で解禁されてから、すさまじい勢いで流れまくり、大都市のFM局を彼らのサウンドが席巻するという、“1Dフィーバー”を巻き起こしている。
デジタル・ダウンロード、ラジオ・マーケットに続き、ストリーミング・サービスのスポティファイでも、今年12週間のNo.1をマークした、ウィズ・カリファの「シー・ユー・アゲイン」の記録を抜いて、歴代首位の座を略奪するという快挙を成し遂げた。チャートを支配する主要チャートで3冠を達成、次週はもしかすると、TOP10入り…、TOP5入りでのデビューも期待できそうな「ドラッグ・ミー・ダウン」。
8月4日、米情報番組『グッド・モーニング・アメリカ』に出演し、メディアで初披露されたのも記憶に新しいが、印象的だったのは、リリースされたばかりだというのに、会場全員で大合唱をするという熱狂に包まれたことだ。ゼインの脱退がまったく影響下にないとはいえなくもとも、彼らをみつめる少女たちの目が輝き続けているのは、1Dのメンバーが、4人になってもブレることなく、そのスタイルを貫いていること。
とはいえ、延長線上にただ居座るだけではない。「ドラッグ・ミー・ダウン」は、これまでのヒット曲に携わる、ジェイミー・スコット、ジョン・ライアン、ジュリアン・ブネッタがプロデュースを手掛けているが、サウンドは、どこか1Dらしくない。レゲエっぽいギターリフが印象的で、ポップなんだけど、どこかクラブ・オリエンテッドな作り出しが、アイドルからアーティストへ、これまでとの違いを明らかにする、彼らの印象を覆すサウンドに仕上がっている。
脱退後、早くもソロ活動の報道が絶えないゼインも、「ドラッグ・ミー・ダウン」をツイートで絶賛し、メディア上で話題をよんでいる。楽曲としてのクオリティの高さ、彼らのチームワークがこうして確認できたところで、秋にリリースされる、4人の独自性をさらに深化させたニュー・アルバムがさらに楽しみになってきた。
Text: 本家 一成