――とはいえ、赤の他人に近い人が話すことを、疑いもせずに「正解」「正しい」と思ってしまうものでしょうか。
塩谷さん:勧誘・接触の中で、個人情報を吸い取っているから、それが可能になるのです。何回か集会に行くうちに突然「偉い先生」が現れる。そして今の状況や心理状態をズバリ言い当てるので、「ご先祖が~」などという荒唐無稽な話でも、悩みや苦しみを抱えている人にはストンと落ちてしまうのです。また、危険な宗教の中には「この世の終わり」をしばしば持ち出す団体がありますが、それは信者が人生を諦めて献金してくれるから。お金を集めたいから言っているだけなのです。組織の上に行くと、そうした集金システムが見えてくる。そこではっと気が付いて脱会できるかどうかが鍵です。
――旧統一教会は身を滅ぼすような高額の献金が問題視されています。ただ、寄付や献金は健全な宗教でもあります。どう違うのですか。
塩谷さん:おっしゃるように、どの宗教も寄付や献金はあります。何が違うのかを分かりやすく例えると、大学の卒業生が大学に寄付をするとしたら、「その学校に通ったことへの感謝」「学校が好きだから」といった前向きな気持ちがあると思います。健全な宗教への寄付や献金も、それと似ています。
一方で危険な宗教団体は、恐怖心や不安をあおってその人の考える力を奪い、その不安の解消のために多額の献金や物品の購入を迫ります。健全な宗教の愛は「無償の愛」ですが、危険な宗教は「見返りを求める愛」なのです。お金を出してこれを買えば、あなたも家族も、ご先祖も救われると。教えが本物なら、「押し売り」は必要ありません。偽物だから、なんだかんだと理屈をつけて押し売りするしかないのです。
――そもそも「ご先祖が~」などという教えは、キリスト教に基づくものなのでしょうか。先祖を気にするのは日本独特の文化のようにも思えるのですが。
塩谷さん:聖書の教えからは完全に逸脱しています。一神教であるキリスト教は「一人一人を神様が作った」という考え方です。その人に起こることはその人だけのもので、それは罪であっても、その人だけのもの。「ご先祖が~」と語ること自体が、あり得ないことです。旧統一教会の教義書である『原理講論』と聖書はまったく別物だということは知ってほしいと思います。集金目的のために、ご先祖を大切にするという日本人の心情を、巧妙に利用しているだけなのです。