中村氏が「考える会」に1億円を振り込んだ際の振込依頼書。これを皮切りに、計7回、2億2905万円を振り込むことになる(撮影/写真部・高野楓菜)
中村氏が「考える会」に1億円を振り込んだ際の振込依頼書。これを皮切りに、計7回、2億2905万円を振り込むことになる(撮影/写真部・高野楓菜)
「考える会」のホームページ。原田環境相(右)と代表の尾尻氏がツーショットで並ぶ写真も掲載されている(撮影/写真部・高野楓菜)
「考える会」のホームページ。原田環境相(右)と代表の尾尻氏がツーショットで並ぶ写真も掲載されている(撮影/写真部・高野楓菜)

 現職大臣や高級官僚が出席し、国会議員会館で繰り返し開かれる勉強会。もしそれが、詐欺のための「舞台装置」だったら。あなたは見抜けるだろうか。

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 2億3千万円をだまし取られた──。東京都内の化粧品通販会社の創業者が7月下旬、警視庁にそんな「告訴状」を持参した。その中で詐欺事件の加害者として名指しされているのは、「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」という団体だ。会のホームページを開くと、原田義昭環境相の顔が大写しになる。現職大臣とこの団体は一体どういう関係なのか。

 同会は医療情報誌「集中」などを出す集中出版社長でもある尾尻和紀(別名・佳津典)氏が代表。原田環境相は、会の「国会議員団代表」を務めている。ホームページによると、同会は2016年4月、原田氏が発起人代表となり発足。企業や病院関係者向けに勉強会などを開いている。

 勉強会は主に国会議員会館で行われ、これまでに37回。講師として、医療関係者や学識経験者などに加えて、厚生労働省や経済産業省、金融庁、財務省の現職官僚らが招かれてきた。

 会のホームページには厚労省と経産省、日本医師会のロゴが「後援」として躍っており、特に厚労省からは課長級や審議官級の幹部が頻繁に勉強会の講師として登壇するなど結びつきの強さがうかがえる。「詐欺事件の加害者」という訴えとは、到底結びつかない。

 告訴状を用意したのは、化粧品通販会社「カワイ化粧品」創業者で社長の中村和雄氏(78)。中村氏によると、知人を介して尾尻氏と知り合ったのは11年のことだった。尾尻氏の営業力や人脈の豊富さに魅力を感じた中村氏は、カワイ化粧品に役員として迎え入れたこともある。

 その後、原田氏とともに「考える会」を立ち上げた尾尻氏は17年夏、中村氏にこんな話を持ちかけたという。

「尾尻氏から、『考える会』で巨額の利益を出す政府の案件、厚労省と経産省の事業を進めていると聞かされました。裏で便宜を図っているのが原田大臣ら、業界の大物3人だと説明されたのです」(中村氏)

 政府の案件とは? 興味を持った中村氏に、尾尻氏はさらに具体的な話を聞かせた。

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