中学入試は、知識をどれだけ習得したかが合否の分かれ目になっていましたが、今、入試の問題は過去に比べて様変わりしています。社会問題を取り上げて「あなたの考え」を問うなど、知識だけでは解けない問題が増えています。
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声の教育社の常務取締役・後藤和浩さんは、近年の入試問題について次のように話す。
「一問一答形式が減り、社会的な問題に対して自分の考えを述べさせる出題が増えています。以前から難関校には見られましたが、最近では中堅校にもその傾向が及んできました」
入試問題を見ると、その学校がどういう学力を大事にしているか、教育観がわかるという。その一例として取り上げたのが今年の開成と麻布の社会の問題だ。
「開成の社会は、知識問題が60%でした。あやふやな知識では太刀打ちできない、しっかりとした知識が求められています」
一方で麻布は、知識問題は20%だったという。
「たとえば累進課税制度がテーマの問題が出されたのですが、その用語を問うのが普通の問題です。麻布では、累進課税に賛成する立場として二つの意見を記述させる問題でした。累進課税は立場によって賛否分かれるのですが、自分とは異なるかもしれない意見を、あえて書かせるのはさすがだと思いました」
■学校だけでなく、家庭の在り方が問われる問題も
今年は時刻表を掲載して出題した学校が複数あった。ただし、設問が学校ごとに異なっている。たとえば東邦大東邦は、成田から最短時間で、北海道に先着している友人と待ち合わせる交通手段の問題が出題された。開智は1964年の9月と10月の二つの時刻表を並べて、走行列車の違いを問う問題を出題した。高輪は八丈島行きの大型客船、航空機、さらに八丈町営バス循環路線の時刻表3種を掲載。交通手段をXYZにして時刻表だけを示し、どれが客船、航空機、バスかを考えさせた。
なかには学校だけでなく、家庭の在り方が問われる問題も。
「渋谷教育学園幕張では、葬式や通夜の帰りに、家の中にケガレを持ち込まないようにするためにどのようなことをするか、という問題が出されました。これは知らなければ解けない問題です」
記述が増えたのも特徴で、国語や社会の文系科目だけでなく算数や理科にも及んでいる。
「算数では、答えに至るまでの考え方、途中式を書かせる学校が増えてきました。計算ミスなどで答えにたどり着けないとき、途中式もすべて消してしまう生徒がいるのですが、残しておくべき。途中のプロセスを評価して加点する学校も多いです」
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