個性的なキャラクターたちが愛され続ける名作ムーミン。フィンランドから来た貴重な作品の展覧会が始まった。浮世絵との類似点、多彩なグッズなど見どころ満載だ。
【絵本に収められた原画やスケッチが展示されているコーナーはこちら】
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フィンランドの芸術家トーベ・ヤンソン(1914~2001)が生み出したムーミンとその家族、スナフキンやミイ、ニョロニョロといった個性あふれるキャラクターたち。
9日から東京の六本木・森アーツセンターギャラリーで始まったムーミン展では、2千点のコレクションを有するフィンランド・タンペレ市の「ムーミン美術館」と、ムーミンキャラクターズ社所蔵のコレクションなどからえりすぐりの作品約500点が展示されている。
全9作あるムーミン小説の代表的シーンの挿絵やスケッチ、絵本の原画以外にも、ポスターなどの広告やフィギュアなどのグッズが展示され、小説や絵本とは違う表情をみせるキャラクターたちにも出合える。
会場に入ってまず驚くのが、ずらりと並ぶ作品の多さだ。最初に訪れる「ムーミン谷の物語」のコーナーでは、1945年発表の小説1作目「小さなトロールと大きな洪水」から、9作目の「ムーミン谷の十一月」までの挿絵やスケッチ約240点が展示されている。
トーベは当初インクの濃淡を使って挿絵を描いていたが、3作目以降はインクペンの線で陰影を表現するスタイルに変える。展示作品の中には手のひらサイズの小さなものもあり、トーベがいかに繊細な線でキャラクターに命を吹き込んだかが伝わってくる。
大自然の中にムーミンたちのシルエットが小さく浮かぶ作品から、キャラクターたちの豊かな表情をアップで切り取った作品まで、斬新で大胆な構図にも目が奪われる。キャラクターの表情や体の向きを細かく変えるなどして試行錯誤した様子がうかがえるスケッチもあり、実際に小説で使われた原画と見比べてみることもできる。
ムーミン美術館のタイナ・ムッリィハルエ館長は、「四隅や細部にも目をこらしてほしい。色の指定やどこに文章を入れるかなどトーベの細かい指示が書き込まれ、こだわりがうかがえます」と語る。若き日のトーベが水彩画や風刺雑誌で描いたムーミンの原型とされる作品も展示されている。館長は「初期のムーミンは赤い目をした黒いトロールで、今の愛らしい姿とは似ても似つかない」と笑う。